9月は、日本株の中でも配当権利を取れる企業が非常に多い月です。
今回調べてみると、2026年9月に配当権利を取れる日本企業は約2,300社という非常に大きな母集団になりました。
ただ、2,300社を配当利回りの高い順に並べても、私が買いたいと思う銘柄ランキングにはなりません。
私が重視しているのは、現在の配当利回りだけではなく、増配実績・利益成長・配当余力・財務・DOEや累進配当などの株主還元姿勢です。
先に結論
約2,300社を母集団としてスクリーニングし、28社を詳しく比較。その中から10社まで絞り、最終的に「長期投資家が優先して調べたい7社」を選びました。
なお、約2,300社すべてのIR資料を1社ずつ読んだわけではありません。
9月配当銘柄の一覧、連続増配、利回り、財務、業績などから候補を絞ったうえで、最終候補について決算・株主還元方針まで確認しています。
また、本記事で紹介する稲畑産業とジーテクト、そして後半で「惜しくも7選から外した銘柄」として紹介する日本特殊陶業(Niterra)は、私自身も保有しています。
ただし、保有しているから評価を高くしたわけではありません。今回あらためて他の9月配当銘柄と同じ基準で比較しています。
2026年9月配当株 おすすめ7選
| 銘柄 | コード | 株価※ | 年間配当予想 | 予想利回り | 注目点 |
|---|---|---|---|---|---|
| 三菱HCキャピタル | 8593 | 1,402.5円 | 51円 | 約3.64% | 長期連続増配 |
| 芙蓉総合リース | 8424 | 4,421円 | 172円 | 約3.89% | 22期連続増配予想 |
| 野村不動産HD | 3231 | 936.2円 | 44円 | 約4.70% | DOE4%を配当下限 |
| アイカ工業 | 4206 | 4,115円 | 140円 | 約3.40% | 累進配当 |
| 日本ゼオン | 4205 | 2,400.5円 | 79円 | 約3.29% | DOE4%以上 |
| 稲畑産業 | 8098 | 4,365円 | 143円 | 約3.28% | DOE+累進配当 |
| ジーテクト | 5970 | 2,327円 | 98円 | 約4.21% | 増配+低PBR |
※株価は2026年8月28日終値を基準。配当利回りは年間予想配当÷株価で計算。株価変動により利回りも変動します。
なぜ「高配当利回りランキング」にしなかったのか
9月配当株には、5%を超える高配当銘柄もあります。
それでも今回は、利回りの高い順には選びませんでした。
配当利回りが高く見えても、
- 利益がピークアウトしている
- 配当性向が高すぎる
- 特別配当で一時的に利回りが高くなっている
- 過去に何度も減配している
- 財務に余裕がない
のであれば、長期保有には不安が残ります。
私が今回特に見たのは、次の3つです。
① 利益の防御
EPSや営業利益が中長期で伸びているか。
② 配当制度の防御
DOE、累進配当、総還元性向など、企業が株主還元方針を明確にしているか。
③ 財務の防御
配当性向や自己資本、キャッシュフローなどに余裕があるか。
最後に現在の株価と配当利回りを重ねました。
DOEについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
① 三菱HCキャピタル(8593)
どんな会社?
三菱HCキャピタルというと「リース会社」というイメージが強いかもしれません。
しかし現在は、航空、物流、不動産、環境エネルギー、法人金融など幅広い事業を持つ総合金融会社になっています。
一つの事業だけに依存せず、世界各地の実物資産や金融サービスから収益を得ているのが特徴です。
長期増配が最大の魅力
2027年3月期の年間配当予想は51円。
長期間にわたって増配を積み重ねてきた実績は、配当株として大きな魅力です。
予想配当性向も40%台で、利益成長を続けることができれば、今後の増配余地も残されています。
長期増配実績、約3%台後半の利回り、事業分散。配当投資の中核候補として考えやすい銘柄です。
リース会社は借入を使って事業を行う金融型ビジネスです。金利上昇、信用コスト、航空機や不動産の残価などは確認しておきたいところです。
② 芙蓉総合リース(8424)
どんな会社?
芙蓉総合リースも大手リース会社ですが、現在は単なる機械や設備のリースだけではありません。
不動産、航空機、エネルギー・環境、ICT、BPOなどへ事業領域を広げています。
成熟したリース事業を土台に、新しい収益源を増やしてきた企業と考えると分かりやすいでしょう。
長期増配なのに配当余力も残る
2027年3月期の年間配当予想は172円。
長期間増配を続けながら、予想配当性向は30%台。
私が高く評価したのはここです。
連続増配株でも配当性向が60%、70%へ上昇していると、将来の増配余力が気になります。
芙蓉総合リースは、まだ利益の中に配当を増やせる余地を残しているように見えます。
長期増配+低めの配当性向。現在の利回りと将来の増配余力を両方狙いやすい組み合わせです。
金利、航空機、不動産、再生可能エネルギー関連などのリスクがあります。単純にPERが低いから安全とは考えない方がよいでしょう。
③ 野村不動産ホールディングス(3231)
マンションだけの会社ではない
野村不動産という名前から、マンション販売会社を想像する方も多いかもしれません。
実際には住宅だけでなく、オフィス、商業施設、物流施設、仲介、運営管理、資産運用など幅広い不動産事業を展開しています。
不動産開発だけに頼らず、管理や仲介、資産運用など継続収益を得られる事業も持っていることが強みです。
DOE4%が「配当の下限」
今回の7社の中で、現在の配当利回りが最も高かったのが野村不動産HDです。
2027年3月期の年間配当予想は44円。8月28日終値ベースの予想利回りは約4.7%です。
さらに注目したいのが株主還元方針です。
野村不動産HDは総還元性向を意識しつつ、DOE4%を満たす配当水準を下限としています。
単年度の利益だけで配当額を決める会社より、一時的な業績変動に対して配当を維持しやすい仕組みです。
4%台後半の現在利回りに加え、DOE4%の配当下限。「今の配当」と「制度上の安定性」の組み合わせが魅力です。
不動産会社なので金利上昇、住宅市況、建築費上昇、棚卸資産、有利子負債などは無視できません。
④ アイカ工業(4206)
建物の「表面」と「接着」に強いメーカー
アイカ工業は、接着剤や化粧板、建装建材などを手掛ける化学・建材メーカーです。
特にメラミン化粧板など、住宅、店舗、オフィス、病院といった身近な建物で使われる製品に強みがあります。
派手な成長企業ではありませんが、長期間利益と配当を積み上げてきたタイプの企業です。
長期増配+累進配当
2027年3月期の年間配当予想は140円。
長期にわたり増配を続けているうえ、中期経営計画では累進配当を基本方針としています。
長期増配の「実績」と累進配当という「制度」の両方を持っているところが、アイカ工業の面白いところです。
4~5%台の高配当株ではありませんが、利益成長と増配を長く続けられるのであれば、取得価格に対する将来の配当利回りが高くなっていく可能性があります。
長期増配+累進配当。「今の高配当」だけではなく「将来の増配」を期待して保有したいタイプです。
原材料価格、国内建設需要、海外事業やM&Aの成否などには注意が必要です。また、累進配当も永久に配当を保証する制度ではありません。
⑤ 日本ゼオン(4205)
合成ゴムだけではない化学メーカー
日本ゼオンは合成ゴムなどのエラストマーで知られる化学メーカーです。
自動車関連のイメージが強い一方で、光学フィルムや電池材料など高機能材料にも事業を広げています。
汎用品だけではなく、より付加価値の高い分野へ事業ポートフォリオを変えていこうとしている企業です。
DOE4%以上+強い財務
2027年3月期の年間配当予想は79円。
会社はDOE4%以上を株主還元の目安としています。
自己資本比率も高く、化学メーカーとして財務に比較的余裕があることは、DOEによる還元を考えるうえで安心材料になります。
DOE4%以上、長期増配、強い財務。財務余力を持ちながら株主還元を強化しているところを評価しました。
化学株は石化市況、自動車需要、電子材料需要、原燃料価格などによって利益が変動します。株価も上昇しており、買値には注意したいところです。
⑥ 稲畑産業(8098)
化学を中心とした専門商社
稲畑産業は、情報電子、化学品、合成樹脂などを扱う専門商社です。
商社といっても単純に商品を右から左へ流しているだけではなく、電子材料、自動車、化学品など幅広い産業のサプライチェーンに入り込んでいます。
海外にも幅広いネットワークを持ち、日本企業の海外展開やグローバルな材料調達を支える会社でもあります。
DOE・累進配当・総還元性向の三点セット
今回調べた中でも、株主還元方針が特に分かりやすかった企業です。
2027年3月期から、
- DOE4~4.5%を目安
- 前年度配当を下限とする累進配当
- 総還元性向50%以上
という3つの株主還元方針を掲げています。
年間配当予想は143円。
現在の利回りだけなら突出して高いわけではありませんが、長期保有する投資家にとって、企業がどのように利益を株主へ返していくのかが明確なのは大きな魅力だと思います。
保有している理由の一つが、利益成長だけでなく株主還元の考え方が分かりやすいことです。今回あらためて他の9月配当株と比較しても、DOE・累進配当・総還元性向という還元方針は魅力的だと感じました。
DOE4~4.5%+累進配当+総還元性向50%以上。今回の7社では株主還元方針の明確さが特に目立ちます。
中国・電子市況、為替、在庫や売掛金など商社特有の運転資本変動には注意。また株価は高値圏にあり、良い会社だからといってどこで買ってもよいとは考えていません。
⑦ ジーテクト(5970)
ジーテクトって何の会社?
今回の7社の中では、ジーテクトはあまり名前を聞いたことがないという方もいるかもしれません。
ジーテクトは、自動車の車体骨格部品やトランスミッション部品などを製造する自動車部品メーカーです。
車のボディー内部には、衝突時に乗員を守るための骨格があります。
ジーテクトは、そうした車体骨格について、設計・解析からプレス、溶接、生産まで幅広い技術を持っています。
日本国内だけでなく海外にも多数の生産拠点を持つ、グローバルな自動車部品メーカーです。
長期増配なのにPBRは低水準
2027年3月期の年間配当予想は98円。
長期にわたり増配を続けており、8月28日終値2,327円を基準にすると予想配当利回りは約4.2%です。
さらに予想配当性向は30%台、PBRもレポート作成時点で0.5倍を下回る水準でした。
「高配当+長期増配+まだ低い配当性向+低PBR」という組み合わせは、今回調べた中でもかなり目を引きました。
会社側も配当性向30%以上を基本とし、中長期ではDOE向上も目標に掲げています。
ただ、保有しているから今回選んだわけではありません。今回あらためて他の9月配当株と比較しても、増配実績、配当余力、財務、バリュエーションの組み合わせは面白いと感じました。
約4.2%の利回り、長期増配、配当性向30%台、低PBR。「知名度は高くないが調べると面白い銘柄」の代表格です。
自動車生産、主要顧客への依存、EV化、為替、関税、設備投資などの影響を受けます。PBRが低いのには理由もあるので、「低PBRだから必ず上がる」と考えるのは危険です。
私なら7社をこう分ける
| タイプ | 銘柄 | 見方 |
|---|---|---|
| 現在の配当重視 | 野村不動産HD、ジーテクト、芙蓉総合リース | 3%台後半~4%台の利回りを取りながら増配も期待 |
| 増配重視 | 三菱HCキャピタル、アイカ工業、稲畑産業 | 現在利回りだけでなく将来の配当成長を重視 |
| 財務・還元制度重視 | 日本ゼオン、アイカ工業、稲畑産業 | DOEや累進配当、財務余力を評価 |
保有している日本特殊陶業は、あえて7選から外しました
今回かなり迷ったのが、日本特殊陶業(Niterra・5334)です。
日本特殊陶業も私は現在保有しています。
しかも、会社そのものはかなり魅力的です。
日本特殊陶業はどんな会社?
主力は自動車用のスパークプラグなど内燃機関関連製品です。
一方で、セラミックス技術を生かした製品などへ事業領域を広げ、内燃機関だけに依存しない会社への転換を進めています。
海外売上比率も高く、世界各地で事業を展開するグローバル企業です。
営業利益率も高く、「昔ながらの自動車部品会社」と一括りにするには収益力の高い企業だと思います。
株主還元方針もかなり面白い
日本特殊陶業は、
DOEを下限として意識した安定配当部分+利益に連動する配当部分
という考え方を採用しています。
DOEによって一定の安定性を持たせながら、利益が成長すれば業績連動部分も増える可能性がある仕組みです。
それでも今回7選から外した理由は、会社が悪いからではありません。
今回の比較では株価上昇によって予想配当利回りが2%台半ばまで低下し、バリュエーションも以前より上昇しています。
また、過去には減配した年度もあります。
「保有を続けたい会社」と「今この株価から9月配当株として優先的に紹介したい会社」は同じではない
自分が持っている株だから何でもおすすめに入れるのではなく、現在の株価も含めて考えることが大切だと思っています。
ほかに惜しくも外した銘柄
NTT(9432)
長期増配と配当の安定性は魅力です。ただ今回の基準では、近年のEPS成長が弱く、「配当+利益成長」を重視すると7社には入りませんでした。
きんでん(1944)
会社の質、利益成長、財務は非常に魅力的です。一方で配当が大きく増え、配当性向も上昇。株価評価も以前よりかなり高くなっているため、今回は見送りました。
デンソー(6902)
世界的な自動車部品メーカーで、財務や株主還元も魅力です。ただし連続増配実績と現在のバリュエーションを比較し、今回はジーテクトを優先しました。
9月配当株は「9月に買えば得」ではない
2026年9月末が配当基準日の銘柄については、予定どおりであれば、
権利付き最終日:9月28日(月)
権利落ち日:9月29日(火)
権利確定日:9月30日(水)
となります。
ただし、配当をもらうためだけに権利付き最終日の直前に買えば必ず得をするわけではありません。
権利落ち日には理論上、配当相当額だけ株価に下落圧力がかかります。
私は長期投資なら、権利日そのものよりも、
- 今後も利益が伸びるのか
- 今後も増配できるのか
- 財務に無理がないのか
- 現在の株価が高すぎないのか
を考える方が重要だと思っています。
まとめ|9月配当株は利回りだけで選ばない
今回は約2,300社ある2026年9月配当銘柄を母集団としてスクリーニングし、最終的に7社を選びました。
三菱HCキャピタル:長期増配実績
芙蓉総合リース:長期増配+低い配当性向
野村不動産HD:DOE4%下限+高めの現在利回り
アイカ工業:長期増配+累進配当
日本ゼオン:DOE4%以上+強い財務
稲畑産業:DOE+累進配当+総還元性向
ジーテクト:長期増配+配当余力+低PBR
もちろん、この7社が今の株価ですべて「買い」という意味ではありません。
日本ゼオンや稲畑産業のように株価が上昇している企業もありますし、金融、不動産、自動車部品など、それぞれ特有のリスクがあります。
それでも私は、単純な高配当利回りランキングより、
「利益が増える → 配当余力が増える → 増配が続く」
という流れを持っている企業を長く保有したいと考えています。
今の配当利回りが一番高い株ではなく、利益成長と増配を続けた結果、数年後、10年後に自分の取得価格に対する配当利回りが大きくなっている。
そんな企業を見つけることが、私の考える配当株投資の面白さです。
本記事は2026年8月29日時点で確認できる企業IR、決算資料、市場データ等をもとに作成しています。株価は原則2026年8月28日終値を基準としています。配当予想や業績予想、株主還元方針は今後変更される可能性があります。
本記事は特定銘柄の売買を推奨するものではありません。株式投資には元本割れや減配などのリスクがあります。実際の投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
なお、本記事で紹介した稲畑産業・ジーテクト、および次点として取り上げた日本特殊陶業は、記事執筆時点で筆者の保有銘柄です。
各社公式IR・決算短信・中期経営計画・株主還元方針、東京証券取引所、国税庁、各種市場データ等を参照。数値は記事公開時点で変更されている場合があります。



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