日本経済は低成長なのに、なぜ日本株は上がるのか?GDPと企業利益の違いを解説

株式投資

「日本は人口が減っているし、経済成長率も低い。それなのに、なぜ日本株はこんなに上がっているのだろう?」

最近の日本株を見ていると、そんな疑問を感じる人も多いのではないでしょうか。

2026年8月17日に内閣府が発表した4〜6月期の実質GDPは、前期比0.3%増、年率換算では1.1%増でした。

3四半期連続のプラス成長ではあるものの、日本経済が急成長しているという数字ではありません。

一方、日本株を見ると景色はかなり違います。

日経平均株価は2026年8月17日に6万9,220円まで上昇。TOPIXも8月に史上最高値を更新するなど、日本株は歴史的な高値圏にあります。

「日本経済は低成長なのに、日本株は上がる」

一見すると矛盾しているように見えます。

しかし私は、ここを理解するには「日本経済」と「日本企業」を分けて考えることが重要だと思っています。

この記事のポイント

  • GDP成長率と企業利益の成長率は同じではない
  • 日本企業は日本国内だけで稼いでいるわけではない
  • 円安・値上げ・利益率改善によって利益は伸びる
  • 自社株買いによって1株利益(EPS)が増えることもある
  • 東証改革によって日本企業の株主意識も変化している
  • 株価は「現在」より「将来の企業利益」を先に織り込む

日本経済は本当に低成長なのか?

まず、「日本経済は低成長」という部分から確認してみます。

内閣府によると、2025年度の日本の実質GDP成長率は+0.8%でした。

さらに政府は2026年度の実質GDP成長率について、2026年7月時点で+0.9%程度を見込んでいます。

つまり日本は景気後退で経済が縮小し続けているわけではありません。

ただ、実質1%前後の成長ですから、中国やインドのような高成長国と比べれば、明らかに低い成長率です。

日本銀行も2026年7月の展望レポートで、日本経済について「緩やかな成長を続ける」という見方を示しています。

ここで大切なのは、

低成長=不況ではない

ということです。

人口減少や少子高齢化が進む日本では、国全体の実質GDPが毎年3%、4%と伸び続けるのは簡単ではありません。

それでも企業が利益を増やすことはできます。

そして株式市場が主に評価するのは、GDPそのものではなく「企業がこれからどれだけ利益を稼ぐのか」です。

GDPと企業利益はそもそも別物

ここが今回の記事で最も重要なところです。

GDPは簡単に言えば、日本国内で新しく生み出されたモノやサービスの付加価値を表します。

一方、株式投資で私たちが見ているのは、トヨタ自動車、ソニーグループ、三菱商事、信越化学工業など、それぞれの企業が生み出す売上や利益です。

そして現在の大企業の多くは、日本国内だけで商売をしているわけではありません。

見るもの 主に何を表す? 株式投資との関係
実質GDP 日本国内の経済活動 景気全体を見る重要指標
企業利益 企業が国内外で稼いだ利益 株価に直結しやすい
EPS 1株当たり利益 PERや株価を考えるうえで非常に重要

例えば、日本国内の消費がほとんど増えなくても、海外で売上を伸ばした日本企業の利益は増える可能性があります。

逆に、日本のGDPが増えていても、自分が保有している企業の利益が減っていれば、その企業の株価には逆風となります。

つまり、

「日本経済が何%成長するか」と「日本株が何%上がるか」は、同じ話ではありません。

理由① 日本企業は世界で稼いでいる

日本株が日本のGDP成長率以上に成長できる大きな理由の一つが、海外事業です。

自動車、電機、機械、半導体製造装置、化学、商社、ゲームなど、日本の代表的な上場企業には海外売上比率が高い会社が少なくありません。

日本の人口が減少して国内市場が伸びにくくても、世界全体で需要が伸びれば企業は成長できます。

例えば、

  • 世界で自動車を販売する
  • 半導体関連製品を海外へ輸出する
  • 海外資源事業から利益を得る
  • 世界中でゲームやコンテンツを販売する
  • 海外企業を買収して事業を広げる

といったことができます。

2026年4〜6月期も、AI投資を背景とした半導体関連需要などが日本企業の業績を支えました。

時事通信の集計では、上場企業の2026年4〜6月期の純利益は前年同期比64%増となっています。

もちろん一時的な要因を含むため、この64%増がそのまま今後も続くわけではありません。

それでも「GDPは1%程度しか伸びていないのに企業利益は大きく伸びる」という現象が実際に起こり得ることを示しています。

理由② 円安は海外利益を円換算で押し上げる

もう一つ、日本企業の利益を大きく左右しているのが為替です。

例えば米国で10億ドルの利益を稼ぐ企業があったとします。

為替 10億ドルを円換算
1ドル120円 1,200億円
1ドル150円 1,500億円
1ドル160円 1,600億円

現地で稼いだ利益が同じでも、円安になるだけで円換算した利益は大きくなります。

海外売上比率の高い企業にとっては、これが決算上の追い風になります。

ただし「円安=日本株にとって良い」と単純化するのは危険です。

円安は原油・天然ガス・食料・原材料などの輸入価格を押し上げます。家計の購買力を低下させ、国内消費を弱くする原因にもなるため、企業や業種によって影響は大きく異なります。

円安は輸出企業や海外売上の多い企業にはプラスになりやすい一方、輸入コストの大きな企業や家計にはマイナスになりやすい。

私はここを分けて考える必要があると思います。

理由③ 低成長でも「値上げ」で名目利益は増える

もう一つ重要なのが、実質成長と名目成長の違いです。

2025年度の日本の実質GDP成長率は+0.8%でしたが、名目GDP成長率は+4.1%でした。

数量ベースではそれほど伸びていなくても、物価や販売価格が上昇すれば名目の売上高は増えます。

企業についても同じです。

以前なら100円で販売していた商品を120円で販売できるようになり、その一方でコスト増加を100円から110円程度に抑えることができれば、利益額は大きく増えます。

長期間デフレが続いた日本では、「値上げすると客が離れる」という考えから価格を上げにくい企業が多くありました。

しかし現在は、原材料費・人件費・物流費などの上昇を背景に価格改定が社会全体に広がっています。

単純なコスト転嫁だけでなく、ブランド力や付加価値を持つ企業が適切な価格を設定できるようになったことは、日本企業の利益率を考えるうえで重要な変化だと感じています。

理由④ 自社株買いでEPSが伸びる

株式投資では、会社全体の利益だけでなくEPS(1株当たり利益)も重要です。

例えば純利益が100億円の会社を考えてみます。

純利益 発行済株式数 EPS
100億円 1億株 100円
100億円 9,000万株 約111円

会社全体の利益がまったく増えなくても、自社株買いによって株式数が減れば、1株当たり利益は増えます。

そしてPERが同じなら、EPSが増えるほど理論上の株価も高くなります。

例えばPER15倍なら、

  • EPS100円 × PER15倍 = 株価1,500円
  • EPS111円 × PER15倍 = 株価約1,665円

となります。

近年の日本企業では自社株買いがかなり積極的になっています。

これは単なる株価対策というだけではなく、長年ため込んできた現預金や政策保有株式などを見直し、資本を効率的に使おうという流れとも関係しています。

理由⑤ 東証改革で日本企業の経営が変わってきた

私は最近の日本株上昇を考えるうえで、東京証券取引所の改革はかなり重要だと思っています。

東証は2023年から、プライム市場とスタンダード市場の企業に対して「資本コストや株価を意識した経営」を求めています。

簡単に言えば、

  • 現金をため込むだけではなく有効活用する
  • 利益率の低い事業を見直す
  • 設備投資・研究開発・人的資本へ投資する
  • 政策保有株を減らす
  • 配当を増やす
  • 必要に応じて自社株買いを行う
  • ROEや資本効率を意識する

といった経営を企業に求める流れです。

日本企業は長い間、「利益は出ているのに現金をため込み、株主還元は少ない」と海外投資家から指摘されることがありました。

しかし現在はかなり変わってきています。

私自身、日本株を長期保有していて特に感じるのが増配企業の多さです。

利益が増え、その利益を設備投資や成長投資に回し、それでも余った資金を配当や自社株買いとして株主へ還元する。

この循環が続けば、日本経済全体が1%程度の成長でも、上場企業の1株当たり価値はそれ以上のペースで成長することができます。

理由⑥ 株価は「今のGDP」ではなく「将来」を見て動く

そして、もう一つ忘れてはいけないのが株価の性質です。

株価は今日の経済状況だけを見て決まっているわけではありません。

投資家は、

  • 来年の利益はいくらになるのか
  • 3年後にどんな事業が伸びているのか
  • 配当はいくら増えるのか
  • 自社株買いは続くのか
  • 金利や為替はどうなるのか
  • 海外投資家からの評価は上がるのか

などを考えて株を売買します。

つまり株価は、ある程度未来を先取りして動くものです。

現在のGDP成長率が低くても、「今後企業利益が増える」と市場が考えれば株価は上昇します。

逆にGDP成長率が高くても、「これから企業利益が減りそうだ」と判断されれば株価は下落します。

GDPが伸びなくても株価は上がる仕組み

ここまでを簡単にまとめると、次のようになります。

日本国内
人口減少・消費の伸び悩み

実質GDPは1%前後の低成長

一方、日本企業は
海外で利益を稼ぐ
+ 値上げによる収益改善
+ AI・半導体など成長市場を取り込む
+ 自社株買い
+ 増配
+ 資本効率改善

企業利益・EPSが増える

株価が上昇する余地が生まれる

こう考えると、「GDPが低成長なのに株価が上がる」という現象は、それほど不思議ではありません。

では、日本株はまだ上がるのか?

ここまで読むと「それなら日本株はまだまだ買える」と思うかもしれません。

ただし、私はそこは少し慎重に考えています。

日経平均株価は2026年8月17日時点で6万9,000円を超えており、すでに大きく上昇しています。

企業利益が増えていることは事実でも、良い材料が株価にどこまで織り込まれているのかは別問題です。

注意したいポイント

  • 株価だけがEPS以上のペースで上昇していないか
  • PERが過去と比べて高くなりすぎていないか
  • 円高になった場合でも利益を維持できるか
  • AI・半導体需要が期待通り成長するか
  • 金利上昇による企業負担は大丈夫か
  • 個人消費の弱さが企業業績へ波及しないか

実際、2026年4〜6月期GDPでは個人消費がほぼ横ばいとなり、設備投資も弱さが見られました。

さらに円安は輸出企業には追い風でも、物価高を通じて家計には負担になります。

企業業績が好調だからといって、日本株にリスクがなくなったわけではありません。

私ならGDPより「利益が増え続ける企業か」を見る

私は、日本のGDP成長率が低いという理由だけで日本株を悲観する必要はないと思っています。

一方で、日本株全体が上昇しているからという理由だけで、何でも買うのも違うと思います。

私が個別株を見るときは、

  • 売上高が伸びているか
  • 営業利益・純利益が伸びているか
  • EPSが長期的に増えているか
  • 増配を続けられる利益とキャッシュフローがあるか
  • 財務に無理がないか
  • PERが利益成長に対して高すぎないか
  • 現在の株価が過去と比べてどの位置にあるか

といったところを確認するようにしています。

特に最近の日本株は株価がかなり上昇した銘柄も多いため、「良い会社かどうか」と「今の株価で買ってよいか」は分けて考えたいところです。

利益が10%伸びている企業の株価が10%上がるのと、利益がほとんど変わっていない企業の株価が50%上がるのでは、意味が全く違います。

以前の記事でも触れましたが、今の日本株を見るときは株価そのものよりも、PERの分母であるEPSがどれだけ伸びているのかを見ることが重要になっていると思います。

まとめ|日本経済の成長率と日本株の成長率は同じではない

日本経済は、実質GDPで見ると現在も1%前後の緩やかな成長です。

人口減少を考えれば、今後も高度経済成長期のような高いGDP成長率を期待するのは難しいでしょう。

しかし、それだけを見て「日本株には成長余地がない」と判断するのも違うと思います。

日本企業は世界でビジネスを展開しています。

海外成長、値上げ、利益率改善、AI・半導体などの新しい需要、自社株買い、増配、東証改革による資本効率改善。

これらによって、日本のGDP成長率を上回るペースで企業利益やEPSが成長することは十分可能です。

今回の結論


日本経済が低成長だからといって、日本株まで低成長になるとは限りません。

株式投資でより重要なのは、GDPそのものよりも、自分が投資する企業の利益とEPSがこれから伸び続けるのかを見ることだと考えています。

日本株が歴史的な高値圏にある今こそ、「日本株が上がっているから買う」のではなく、企業の利益成長と現在の株価を一社ずつ確認していきたいと思います。

参考資料

※本記事は2026年8月17日時点の公表資料をもとに作成しています。掲載内容は特定の銘柄や金融商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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