10月権利の高配当株を探していて、気になる企業を見つけました。
それが東証プライム上場の巴工業(6309)です。
名前だけを見ると「何をしている会社なのだろう?」と思う人も多いかもしれません。
調べてみると、巴工業は遠心分離機を手掛ける機械メーカーであると同時に、化学品を扱う専門商社という、少し珍しい2つの顔を持つ会社でした。
さらに2026年10月期の年間配当予想は76円。配当方針も強化され、DOE(株主資本配当率)5%を下限、連結配当性向50%以上を目標としています。
今回は「高配当だから」という理由だけではなく、巴工業がどんな会社なのか、業績、海外展開、配当方針、そして長期投資先としての魅力とリスクまで詳しく見ていきます。
※この記事は2026年9月25日時点で確認できる会社公表資料・決算資料などをもとに作成しています。株価や予想数値は今後変動する可能性があります。
巴工業(6309)はどんな会社?
巴工業は1941年設立の企業で、大きく分けて2つの事業を展開しています。
| 事業 | 主な内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| 機械製造販売 | 遠心分離機など | メーカー |
| 化学工業製品販売 | 樹脂・電子材料など | 専門商社 |
つまり巴工業は、単純な機械メーカーでも化学メーカーでもありません。
この2つの異なる事業を組み合わせていることが、巴工業の大きな特徴です。
主力は実は化学品事業
「巴工業」という社名から機械メーカーのイメージがありますが、売上高を見ると、実は化学品事業の方が大きくなっています。
2025年10月期の売上高は次の通りです。
| 事業 | 売上高 | 構成比 |
|---|---|---|
| 機械製造販売 | 約152億円 | 約26% |
| 化学工業製品販売 | 約441億円 | 約74% |
| 合計 | 約594億円 | 100% |
売上高の約4分の3が化学品関連です。
ただし利益を見ると、機械事業の存在感もかなり大きくなっています。
2025年10月期の営業利益は、機械事業が約18.4億円、化学品事業が約35.1億円でした。
特に機械事業は、2024年10月期の営業利益約11.9億円から大きく増加しています。
遠心分離機とは何に使うのか?
巴工業の機械事業の中心となるのが遠心分離機です。
遠心分離機とは、高速回転によって生まれる遠心力を利用し、液体と固体、あるいは比重の異なる物質を分離する機械です。
身近な例で考えるなら、洗濯機の脱水も遠心力を利用しています。
ただし巴工業が扱っているのは、工場やインフラ施設などで使用される大型・高性能な産業用設備です。
こんな分野で使われている
- 下水・排水処理
- 石油化学
- 食品
- 医薬・バイオ
- 鉱物・素材
- 製鉄
- エネルギー
- 各種化学工場
たとえば下水処理施設では、汚泥に含まれる水分を分離します。
化学工場では、製造工程の中で液体と固体を分けるために使用されます。
食品や医薬品の製造工程でも分離技術は必要になります。
このように遠心分離機は、一般消費者からはほとんど見えませんが、さまざまな産業を裏側から支えている設備です。
スマートフォンや家電のような流行商品ではなく、工場・下水・化学・食品など幅広い分野で必要になる設備を扱っています。こうしたBtoBのニッチ企業は、派手さはなくても長期的な需要が続きやすいところが魅力です。
化学品事業は「ただの商社」ではない
もう一つの柱が化学工業製品販売事業です。
巴工業自身が大量の化学製品を製造するというより、国内外から特色のある化学材料を調達し、顧客企業へ販売する専門商社としての役割を担っています。
取り扱っている分野は非常に幅広く、たとえば次のような商品があります。
- 合成樹脂関連材料
- 塗料・インキ・接着剤向け材料
- 特殊セラミックス
- 炭素・黒鉛製品
- 半導体関連材料
- パワー半導体向け部材
- バイオプラスチック
- リサイクル材料
特に今後注目したいのが、半導体・パワー半導体・環境対応材料です。
会社資料によると、2025年10月期にはパワー半導体向け部材の販売拡大や、チェコ子会社での販売基盤構築なども進めています。
一方で、化学品商社は景気や材料価格、為替などの影響を受けるため、「安定成長だけの会社」と考えるのは危険です。
業績はここ数年かなり伸びている
私が巴工業で最も注目したのが、単に配当が高いだけではなく、本業の利益そのものが伸びていることです。
| 年度 | 売上高 | 営業利益 |
|---|---|---|
| 2021年10月期 | 451億円 | 28.4億円 |
| 2022年10月期 | 456億円 | 33.0億円 |
| 2023年10月期 | 496億円 | 40.5億円 |
| 2024年10月期 | 521億円 | 47.0億円 |
| 2025年10月期 | 594億円 | 53.5億円 |
2021年10月期から2025年10月期までの4年間で、売上高は約451億円から594億円へ増加。
営業利益は約28億円から53億円へと、約1.9倍になりました。
高配当株を見る時に注意したいのが、「利益が伸びていないのに配当だけ増やしている会社」です。
巴工業の場合は今のところ、利益の成長を伴いながら配当も増やしてきています。
2026年10月期はどうなっている?
最新の2026年10月期第3四半期累計では、少し注意も必要です。
| 項目 | 3Q累計 | 前年比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 468.1億円 | +0.9% |
| 営業利益 | 47.1億円 | ▲1.9% |
| 経常利益 | 48.4億円 | ▲0.3% |
| 純利益 | 35.2億円 | +5.0% |
営業利益は前年同期比でわずかに減っています。
したがって「今期もものすごい勢いで成長している」という見方は少し違います。
ただし会社は通期予想を据え置いています。
| 項目 | 2026年予想 | 前年比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 629億円 | +6.0% |
| 営業利益 | 59億円 | +10.2% |
| 経常利益 | 60億円 | +11.1% |
| 純利益 | 44億円 | +14.2% |
会社計画を達成できれば、売上高・利益とも過去最高水準となります。
3Q累計時点では営業利益が前年を下回っています。通期増益予想を達成するには、最終四半期の利益が重要になります。「増益予想だから問題なし」と決めつけず、本決算で確認したいポイントです。
巴工業は海外でも事業を展開している
巴工業を調べるまで、私は国内中心の会社というイメージを持っていました。
しかし実際には海外展開も積極的に行っています。
機械事業の製品は世界50カ国以上への納入実績があり、化学品事業でもアジアを中心に海外拠点を展開しています。
化学品事業では、中国、インドネシア、インド、米国、ベトナム、タイ、マレーシア、チェコなどにネットワークがあります。
海外売上比率は約15%
2025年10月期の地域別売上高を見ると、次のようになっています。
| 地域 | 売上高 | 構成比 |
|---|---|---|
| 日本 | 約506億円 | 約85.3% |
| アジア | 約68.6億円 | 約11.6% |
| その他 | 約18.6億円 | 約3.1% |
海外売上高は合計約87億円で、全体の約14.7%です。
数字だけを見ると、完全なグローバル企業というほど海外依存度は高くありません。
ただし事業別に見ると違いがあります。
遠心分離機は約3割が海外
2025年10月期の機械事業の販売高は約152億円。
そのうち海外向け販売は約43.7億円でした。
つまり機械事業だけを見ると、海外比率は約29%あります。
一方、化学品事業は約441億円の売上に対し海外販売は約43.5億円なので、海外比率は約10%です。
遠心分離機は海外での販売余地が大きく、化学品事業では海外から商品を仕入れて国内販売する取引もあります。そのため「海外売上15%だから為替や海外景気の影響は小さい」と単純には考えない方が良さそうです。
今後はインドなど海外市場も成長材料
巴工業は新しい中期経営計画でも、海外市場の開拓を重要戦略に掲げています。
特に機械事業では、インドなど成長市場への展開を進めています。
2025年にはインドで現地法人を設立し、石油化学関連プロジェクトの受注にもつなげています。
遠心分離機は、工業化や都市化に伴って必要になる設備です。
化学工場や下水処理、食品、医薬品といった用途を考えると、今後設備投資が拡大する新興国は長期的な市場になり得ます。
新中期経営計画では売上700億円を目指す
巴工業は2026年10月期から2028年10月期までの新中期経営計画「Create The New Future」をスタートしています。
2028年10月期の目標は次の通りです。
| 項目 | 2025年実績 | 2028年目標 |
|---|---|---|
| 売上高 | 594億円 | 700億円 |
| 営業利益 | 53.5億円 | 70億円 |
| 純利益 | 38.5億円 | 50億円 |
| ROE | 9.4% | 10.5% |
売上高だけではなく、利益率や資本効率も引き上げようとしています。
特に機械事業では新工場建設、海外展開、バイナリー発電、その他新製品などへの投資を進めています。
化学品事業でも半導体、環境関連、ライフサイエンスなど新しい市場を開拓する方針です。
配当方針はかなり魅力的
高配当株投資家として、巴工業で最も注目したいのが株主還元です。
会社は新中期経営計画に合わせて配当方針を変更しました。
- DOE5%を下限
- 連結配当性向50%以上を目標
- 安定的かつ継続的な配当を実施
以前は「連結配当性向40%以上」が目標でした。
そこから配当性向50%以上へ引き上げ、さらにDOE5%という基準を追加しました。
DOEとは?
DOEは「株主資本配当率」のことで、簡単に言えば、会社が積み上げた株主資本に対してどれくらい配当を出しているかを見る指標です。
配当性向はその年の利益によって大きく動きます。
一方DOEを基準にすると、利益が一時的に減少した場合でも配当を安定させやすくなります。
そのため高配当株を長期保有する場合、DOE採用企業は非常に注目しやすい存在です。
ただし巴工業は「累進配当」を明記しているわけではありません。
DOE5%を下限としていますが、将来の配当を完全に保証する制度ではない点には注意が必要です。
2026年10月期は年間76円配当予想
2026年10月期の年間配当予想は76円です。
2025年10月期は株式分割調整後で年間約60.33円なので、今期も増配予想となっています。
2026年9月25日午前時点の株価は1,970円前後で推移しています。
この株価を基準にすると、予想配当利回りは約3.8%台です。
超高配当株というほどではありません。
ただ私は、利回り5%でも利益が伸びない会社より、
利益が伸びる
+増配する
+DOEを採用している
+財務が強い
という会社の方が、長期保有では安心感があります。
財務もかなり強い
2026年10月期第3四半期時点の自己資本比率は76.7%です。
製造業としてはかなり高い水準です。
2025年10月期末でも75.8%でした。
配当を増やしている会社を見る時、「無理をして配当していないか」は重要です。
巴工業の場合、現時点では財務にかなり余裕があります。
現在の株価は割高なのか?
2026年9月25日午前時点では株価は1,970円前後。
会社予想EPSは約149.5円なので、予想PERは約13倍です。
PBRも1倍台前半です。
| 指標 | 現在の目安 | 印象 |
|---|---|---|
| PER | 約13倍 | 割高感は小さい |
| PBR | 約1.3倍 | 極端に高くない |
| 配当利回り | 約3.8% | まずまず |
成長株として非常に割安というほどではありませんが、利益成長、財務、配当方針まで含めれば、それほど高い評価を受けているようには見えません。
ただし年初来高値は2,200円台まで上昇した時期もあり、株価は以前より評価されています。
巴工業の良いところ
- 遠心分離機というニッチな事業を持つ
- 化学品専門商社という第二の柱がある
- ここ数年、売上・利益とも成長している
- 海外市場に成長余地がある
- 自己資本比率が高く財務が強い
- DOE5%を下限とする配当方針
- 配当性向50%以上を目標
- 2026年10月期も増配予想
- PERは13倍前後
一方で注意したいところ
① 今期3Qは営業減益
通期は増益予想ですが、第3四半期累計では営業利益が前年同期比1.9%減っています。
最終四半期で本当に計画通り増益できるか確認が必要です。
② 化学品事業の比率が高い
売上高の約74%は化学品事業です。
遠心分離機メーカーというイメージだけで投資すると、実態を見誤る可能性があります。
化学品市況、半導体関連需要、原材料価格などの影響も受けます。
③ 為替の影響
海外販売だけでなく海外からの仕入れも行っています。
そのため「円安=全面的にプラス」「円高=全面的にマイナス」という単純な会社ではありません。
④ 設備投資需要には波がある
遠心分離機は企業の設備投資に左右される部分があります。
石油化学など大型案件の受注時期によって、年度ごとの業績に差が出る可能性があります。
⑤ DOEでも減配リスクはゼロではない
DOE5%を下限とする方針は魅力ですが、「絶対に減配しない累進配当」とは異なります。
長期間にわたる利益悪化が起きれば、配当方針そのものが変更される可能性もあります。
私の投資基準でチェックしてみる
私は高配当株を見る時、単純な利回りだけではなく、利益成長・増配・配当余力・財務・株価水準を重視しています。
| チェック項目 | 評価 | 理由 |
|---|---|---|
| 利益成長 | ◎ | 中長期では増益傾向 |
| 増配 | ◎ | 2026年も増配予想 |
| 配当方針 | ◎ | DOE5%・配当性向50%以上 |
| 財務 | ◎ | 自己資本比率76%台 |
| 株価水準 | ○ | PER13倍前後 |
| 今期業績 | ○ | 通期増益予想だが3Q営業減益 |
総合すると、巴工業は私が好む「利益成長+増配+高配当」という条件にかなり近い会社です。
特に気に入ったのは、単純に配当を増やしているのではなく、DOEを導入して株主還元方針そのものを強化している点です。
買うなら株価水準も考えたい
年間76円配当を基準に、配当利回りから株価を逆算すると次のようになります。
| 配当利回り | 株価目安 | 考え方 |
|---|---|---|
| 3.5% | 約2,170円 | やや高め |
| 4.0% | 約1,900円 | 注目水準 |
| 4.2% | 約1,810円 | 魅力が増す |
| 4.5% | 約1,690円 | かなり注目 |
現在の1,900円台後半は、配当利回りだけを見ると「ものすごく安い」という水準ではありません。
個人的には、株価が1,900円前後まで下がって利回り4%程度になると、より魅力を感じます。
もちろん、利益が成長し配当が今後さらに増えるのであれば、現在の株価でも将来の取得利回りは上昇します。
まとめ|地味だが長期保有候補として面白い
巴工業を調べてみると、単なる10月高配当株ではありませんでした。
遠心分離機というニッチなメーカー事業と、化学品専門商社という2つの柱を持っています。
さらに海外展開、半導体・環境関連材料、インド市場、新規エネルギー関連事業など、今後の成長材料もあります。
そして投資家として特に注目したいのが、
- DOE5%を下限
- 配当性向50%以上
- 利益成長
- 増配
- 自己資本比率76%台
という組み合わせです。
派手な成長株ではありません。
しかし、「利益を伸ばしながら配当も増やす地味なBtoB企業」という意味では、長期高配当投資との相性はかなり良さそうに感じます。
一方、2026年10月期第3四半期では営業利益が前年を下回っているため、本決算での着地はしっかり確認したいところです。
私は今後も業績と配当の両方を確認しながら、株価が納得できる水準になれば投資候補として検討していきたいと思います。
参考資料
- 巴工業株式会社 公式サイト
- 巴工業株式会社 2025年10月期 有価証券報告書
- 巴工業株式会社 2026年10月期 第3四半期決算短信
- 巴工業株式会社 第14回中期経営計画「Create The New Future」
- 巴工業株式会社 業績の推移
※本記事は特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断は、最新の決算資料や適時開示などをご確認のうえ、ご自身の責任でお願いいたします。


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