バークシャー・ハサウェイの本当のポートフォリオ|Apple・Alphabetだけではない巨大企業帝国を解説

個別株分析

「バークシャー・ハサウェイのポートフォリオ」と聞くと、AppleやCoca-Cola、American Expressなどの保有株を思い浮かべる方が多いと思います。

2026年にグレッグ・アベル氏がCEOへ就任してからは、Googleの親会社Alphabetを一気に買い増したことも大きな話題になりました。

しかし、バークシャーの「本当のポートフォリオ」は、13Fに掲載される上場株だけではありません。
BNSF鉄道、GEICOをはじめとする保険会社、Berkshire Hathaway Energy、製造業、住宅、物流、小売業など、企業を丸ごと所有している事業が数多くあります。

この記事で一番伝えたいこと

バークシャーは「有名株を買う投資会社」というより、
保険・鉄道・エネルギー・製造業などが稼いだ巨額のキャッシュを、さらに有望な企業や事業へ再投資する巨大な複利マシン
と考えた方が実態に近いと思います。

まずは最新13F|バークシャーの米国株ポートフォリオ

2026年8月14日に提出された最新の13Fは、2026年6月30日時点の保有状況を示しています。

13Fに掲載された米国上場株などの合計評価額は約2,993億ドル
相変わらず少数の大型銘柄にかなり集中しています。

順位 銘柄 評価額 13F比率
1 Apple 約660億ドル 約22.0%
2 American Express 約513億ドル 約17.1%
3 Alphabet 約378億ドル 約12.6%
4 Coca-Cola 約325億ドル 約10.9%
5 Bank of America 約275億ドル 約9.2%

※2026年6月30日時点。AlphabetはClass A・Class Cを合算した概算。13Fの評価額を基に作成。

上位5銘柄だけで13Fの7割を超えます。

これだけ巨大な会社になっても、「何十銘柄、何百銘柄へ均等に分散する」のではなく、
本当に優れていると考える企業へ大きく投資するというバークシャーらしさは残っています。

最大の変化はAlphabet|一気に第3位へ

今回の13Fで最も目を引いたのはAlphabetです。

2026年3月末には約5,780万株だったAlphabet株が、6月末には約1億600万株へ増加。
わずか3か月で約83%増え、評価額は約378億ドルまで膨らみました。

Alphabetへの投資が興味深い理由

  • Google検索という強力な競争優位
  • YouTubeという巨大動画プラットフォーム
  • Google Cloudの成長
  • Geminiを中心とした生成AI
  • 独自AI半導体TPU
  • Waymoなど将来の成長事業

以前のバークシャーには「ハイテク企業への投資には慎重」というイメージもありました。
しかし現在はAppleに加えてAlphabetまで巨大保有銘柄になっています。

もっとも、Alphabet投資を単純に「アベルCEOになったから始まった」と考えるのも違います。
ウォーレン・バフェット氏自身がAlphabetへの投資を発案したことを明らかにしており、現在も会長として資本配分についてアベルCEOと相談しています。

14四半期続いた「売り越し」が終了

Alphabetだけではありません。

2026年4~6月期、バークシャーは株式を約235億ドル購入する一方、売却額は約37億ドルでした。

約198億ドルの買い越しとなり、14四半期続いていた株式の売り越しが終了しました。

Alphabetのほか、Delta Air Lines、Lennar、Macy’sなども買い増す一方、Bank of America、Capital One、Kroger、DaVita、Nucorなどは一部削減しています。

バフェット氏のCEO在任末期は現金が積み上がり続けていましたが、アベル体制では少しずつ資金を動かし始めているように見えます。

ただし13Fだけを見ても「本当のポートフォリオ」は分からない

ここからが今回の記事で一番重要な部分です。

ネット上では「バークシャー・ハサウェイのポートフォリオ」として13Fの保有株ランキングがよく紹介されています。

しかし13Fは、基本的に米国で報告対象となる上場証券などの保有状況を確認する資料です。

そのため、
バークシャーが企業そのものを所有している完全子会社や、日本の5大商社への投資などを含めた全体像とは一致しません。

バークシャーを見るなら4つに分けると分かりやすい

  1. 米国上場株などの13Fポートフォリオ
  2. 日本5大商社など海外株
  3. GEICO・BNSFなどの傘下企業
  4. 現金・米国短期国債など

日本の5大商社も重要なポートフォリオ

日本人投資家として特に興味深いのが、バークシャーによる日本の5大商社への投資です。

2025年末時点での保有状況は次の通りです。

企業 保有比率 取得原価 時価
三菱商事 10.8% 約42.5億ドル 約92.1億ドル
伊藤忠商事 10.1% 約41.7億ドル 約88.9億ドル
三井物産 10.4% 約34.9億ドル 約87.9億ドル
丸紅 9.8% 約15.7億ドル 約44.7億ドル
住友商事 9.7% 約19.1億ドル 約40.2億ドル

5社合計の取得原価は約154億ドルなのに対し、2025年末の時価は約354億ドル
すでにかなり大きな含み益になっています。

さらに2025年には5社から合計約8.6億ドルの配当を受け取っています。

アベルCEOは株主向け書簡の中で、日本への投資について
米国の主要保有株と同じ基準で評価し、重要性や長期的な価値創造の機会も同等に見ている
という趣旨を明確にしています。

日本の商社株を単なる「海外への分散投資」として持っているわけではない点は、個人的にも非常に興味深いところです。

商社投資でもバークシャーらしい

5大商社は資源だけではなく、食品、機械、インフラ、化学、金融、物流など幅広い事業を持ちます。
キャッシュを生み出し、その資金を次の事業へ再投資するという構造は、バークシャー自身にもよく似ています。

バークシャーの中心は今も「保険」

バークシャーを理解するうえで欠かせないのが保険事業です。

主な保険事業には、

  • GEICO:自動車保険
  • General Re:再保険
  • National Indemnity:損害保険・再保険
  • Berkshire Hathaway Specialty Insurance:法人向け保険
  • その他、多数の保険会社

アベルCEO自身も2026年の株主向け書簡で、
「Insurance will continue to be our core(保険は今後も中核であり続ける)」
としています。

保険の「フロート」が投資資金を生み出す

バークシャーの強さを語る時によく登場するのがフロート(Float)です。

保険会社は顧客から保険料を先に受け取り、事故などが起きた後に保険金を支払います。
その間、保険会社の手元に存在している資金がフロートです。

2026年6月末時点でバークシャーの保険フロートは約1,775億ドルに達しています。

これがバークシャーの大きな武器

保険事業を適切に運営できれば、巨大なフロートを長期間運用できます。
バークシャーは長年、この資金と自社の利益を使って株式投資や企業買収を行い、さらに利益を増やしてきました。

2026年前半については保険引受事業全体で利益が出ており、バークシャーはフロートの平均コストを「マイナス」と説明しています。

つまり保険事業そのものでも利益を得ながら、巨額の運用資金も確保できるという非常に強い構造です。

BNSF鉄道|上場株には出てこない巨大資産

次に重要なのがBNSF Railwayです。

BNSFは北米最大級の貨物鉄道会社で、28州に3万2,500マイル超の路線網を持ち、カナダ3州でも事業を展開しています。

2026年前半のBNSFは、

項目 2026年前半 前年同期
鉄道営業収益 約125億ドル 約114億ドル
純利益 約29.4億ドル 約26.8億ドル

鉄道はAIや半導体のような派手な成長産業ではありません。

しかし、新しい企業が何万マイルもの線路を一から建設してBNSFと競争するのは容易ではありません。

こうした簡単には再現できない事業基盤=経済的な堀(モート)は、バフェット氏が長年好んできた企業の特徴でもあります。

一見するとGoogle検索と鉄道は全く違うビジネスですが、
「競争相手が簡単に崩せない強みを持つ」という点では共通しています。

Berkshire Hathaway Energy|電力・天然ガス・再生可能エネルギー

バークシャーには巨大なエネルギー事業もあります。

Berkshire Hathaway Energy(BHE)の傘下には、

  • PacifiCorp
  • MidAmerican Energy
  • NV Energy
  • 米国内の天然ガスパイプライン
  • 英国Northern Powergrid
  • 再生可能エネルギー事業

などがあります。

2026年前半のBHEのバークシャー株主帰属利益は約20億ドル
前年同期から増益となっています。

電力網やガスパイプラインも鉄道と同じく、大規模なインフラ投資が必要で参入障壁が高い事業です。

長期間にわたって安定したキャッシュフローを生み、そのキャッシュをさらに再投資できる。
これもバークシャーらしい資産だと思います。

実は製造業・住宅・物流・小売まで持っている

バークシャーの傘下企業を見ていくと、その幅広さには驚かされます。

分野 主な企業・ブランド 主な事業
航空・精密部品 Precision Castparts 航空機・産業向け部品
化学 Lubrizol、OxyChem 特殊化学・基礎化学
住宅 Clayton Homes、Taylor Morrison 住宅建設・住宅金融
航空サービス NetJets プライベートジェット
物流・卸売 McLane 食品・日用品などの流通
交通・小売 Pilot Flying J トラックストップ・燃料販売
消費財 Duracell、Fruit of the Loom、Brooks 電池・衣料・スポーツ用品
食品・小売 Dairy Queen、See’s Candies 外食・菓子

この一覧を見ると、バークシャーを単純な「投資会社」と呼ぶことに少し違和感が出てきます。

むしろアメリカ経済の縮図のような巨大企業グループです。

アベル体制で企業買収も再び動き始めた

2026年に入ってからは、株式投資だけでなく企業を丸ごと取得する大型案件も続いています。

OxyChemを買収

2026年1月2日、バークシャーはOccidental Petroleumの化学事業OxyChemの買収を完了しました。

最終的な現金支払額は各種調整後で約94億ドル
OxyChemは水処理、医薬品、ヘルスケア、建設などで使用される基礎化学品を製造しています。

Taylor Morrisonを約68億ドルで買収

さらに2026年7月24日には、米住宅大手Taylor Morrisonの買収を完了しました。

株式価値は約68億ドル、企業価値では約85億ドルの大型案件です。

バークシャーがすでに所有するClayton系の住宅事業と組み合わせることで、住宅分野の規模はさらに大きくなります。

2026年の資本配分はかなり興味深い

Alphabetを大幅買い増しする一方で、OxyChemやTaylor Morrisonのような実物事業も丸ごと買収しています。
「テクノロジーへ一気に傾いた」というより、バークシャーらしく幅広い産業の中から長期保有できる資産を探しているように見えます。

それでも約3,600億ドル規模の現金・短期国債を持つ

ここまで大型投資を行っても、バークシャーにはまだ莫大な待機資金があります。

2026年6月末時点で、保険・その他事業が保有する現金、現金同等物、米国短期国債は未決済分を調整すると約3,592億ドルあります。

株価が高い時に無理に全額投資せず、本当に魅力的な機会が来るまで大量の現金を持つ。

そして機会が来れば、Alphabetへ100億ドル単位で投資したり、企業を丸ごと買収したりする。

この「何もしない時間」と「一気に動く時」の差も、バークシャーの資本配分で参考になる部分だと思います。

新CEOグレッグ・アベルでバークシャーは変わるのか?

2026年からグレッグ・アベル氏がCEOとなり、ウォーレン・バフェット氏は会長として残っています。

アベルCEOは初めての株主向け書簡で、株式投資についても最終的な責任はCEOである自分にあると明記しています。
投資マネージャーのTed Weschler氏が約6%を担当し、それ以外の大部分はCEOの責任下にあります。

ただ、アベル氏はバークシャーの文化を大きく変える姿勢を示しているわけではありません。

むしろ、

  • 理解できる事業へ投資する
  • 長期的な競争優位を重視する
  • 優良企業なら集中して保有する
  • 無理に投資せず現金を残す
  • 企業を買ったら長期間保有する

という基本思想は、バフェット・マンガー時代からかなり引き継がれています。

私は今のところ、
「バフェット流を捨てた」のではなく、「バフェット流の資本配分をアベル氏の時代でも続けながら、投資対象は時代に合わせて変化している」
と見るのが自然だと思っています。

バークシャーから個人投資家が学べること

バークシャーと同じ投資をそのまま真似する必要はありません。
資金量も投資期間も個人投資家とは全く違います。

それでも、ポートフォリオを見ていると参考になる考え方は多いです。

  1. 株価だけでなく事業そのものを見る
  2. 競争優位が長く続く企業を選ぶ
  3. 優良企業でも価格が合わなければ待つ
  4. 買った後は長期保有を基本にする
  5. 配当だけでなく、企業が利益をどう再投資するかを見る

Coca-Colaのような成熟企業もあれば、AlphabetのようなAI関連企業もあり、BNSFのような鉄道会社もあります。

業種はバラバラですが、
長く稼げる仕組みがあるか、競争優位があるか、経営者へ資本を預けられるか
という判断基準には一貫性があります。

まとめ|バークシャーの本当の強さは「資本を回し続ける仕組み」

バークシャー・ハサウェイのポートフォリオを13Fだけで見ると、
Apple、American Express、Alphabet、Coca-Cola、Bank of Americaなどを大量保有する巨大投資家に見えます。

しかし全体を見ると、その印象はかなり変わります。

  • GEICOなどの巨大保険事業
  • BNSFという北米鉄道網
  • Berkshire Hathaway Energy
  • 製造・住宅・物流・小売企業
  • 日本の5大商社
  • 約3,600億ドル規模の現金・短期国債
  • AppleやAlphabetなどの上場株

これらがすべて一つの会社の中に入っています。


私がバークシャーを調べて最も興味深いと感じたこと

本当の強さは「次に上がる株を当てる能力」だけではなく、
保険、鉄道、エネルギーなどから生まれるキャッシュを、より魅力的な事業へ何十年も再投資し続けられる仕組み
にあるのではないかと思います。

2026年からグレッグ・アベル体制へ移行しましたが、Alphabetへの大型投資やOxyChem、Taylor Morrisonの買収を見る限り、資本を長期的に増やすというバークシャーの基本思想は今も続いています。

今後は、巨額の現金をどこへ振り向けるのか、Alphabetをさらに買い増すのか、日本の商社投資を増やすのか、新たな大型企業買収が出てくるのか。

バフェット氏がCEOを退いた後のバークシャーも、長期投資家として引き続き追いかけていきたい企業です。

※注意
本記事は2026年8月時点で公表されているBerkshire Hathawayの13F、決算資料、株主向け書簡などを基に作成しています。
13Fは2026年6月30日時点の保有状況であり、その後に売買されている可能性があります。
また、本記事は特定銘柄の購入・売却を推奨するものではありません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました