『ダービースタリオン2』について調べていたところ、開発を担当しているゲーム会社ランド・ホーが、東証プライム上場のOrchestra Holdings(6533)のグループ会社であることを知りました。
ゲーム会社の親会社ならどんな企業なのだろうと調べてみると、実際の主力事業はゲームではなく、デジタルマーケティングとDX・システム開発です。
さらに決算を確認すると、2026年上期は売上がほぼ横ばいにもかかわらず営業利益が26%超増加。普通配当も大幅に引き上げられ、予想PERは約11倍。
数字だけを見ると、なかなか面白そうな銘柄に見えます。
しかし10年チャートを確認すると、株価は2021年に大きく上昇した後に急落し、現在は2017~2019年頃とそれほど変わらない水準です。
さらに業績も長期では右肩上がりながら、決してきれいな成長ではありません。
そこで今回は、Orchestra Holdingsの業績、配当、株主優待、M&A、財務、過去の株価推移まで調べ、現在の1,152円前後に投資妙味があるのか考えてみます。
Orchestra Holdingsは長期的に事業規模を拡大し、2026年も利益成長が続いています。
2026年上期は営業利益26.7%増、親会社帰属利益36.5%増。会社予想EPS102.54円に対して株価1,152円なら、予想PERは約11.2倍です。
一方、過去を見ると営業利益やEPSにはかなり波があります。2023年には大幅減益を経験し、M&Aによるのれんや借入も増えています。
私の現時点の評価は、「買えない会社ではないが、積極的に飛びつくより次の決算を確認したい銘柄」です。
- Orchestra Holdingsとはどんな会社?
- 2026年上期は売上横ばいでも大幅増益
- 2026年通期は営業利益16億円を計画
- 株価1,152円なら予想PERは約11.2倍
- 長期業績を見ると右肩上がりだが、きれいな成長ではない
- 2021年→2022年の売上急減は業績悪化ではない
- 本当に問題だったのは2023年の大幅減益
- 2024年以降はIFRS移行にも注意
- 10年株価チャートを見ると株主リターンは弱い
- 理想的な成長株とは少し違う
- 配当はかなり魅力的な変化
- 15,000円の株主優待は魅力的だが、私は評価を割り引く
- M&Aは成長源であると同時に最大のリスク
- のれんが大きい点は注意したい
- プライム市場の上場維持基準も特殊な材料
- 『ダービースタリオン2』は6533の大きな業績材料になる?
- Orchestra Holdingsの投資メリット
- Orchestra Holdingsの投資リスク
- 私の投資評価|今は「監視銘柄」にしたい
- 今後確認したい5つのポイント
- まとめ|ダビスタ2を調べていたら面白い銘柄に出会ったが、投資判断は簡単ではない
Orchestra Holdingsとはどんな会社?
Orchestra Holdingsは2009年設立の持株会社で、証券コードは6533。東証プライム市場に上場しています。
グループ全体では、デジタルマーケティング、DX・システム開発、IP・エンタメなど複数の事業を展開しています。
デジタルマーケティング
運用型広告、SEO、Webマーケティング、AIを活用したマーケティング支援などを展開。現在のグループ利益を支える重要事業です。
DX・システム開発
クラウド、システム開発、ソフトウェア品質支援などを展開。M&Aによる技術者拡大も積極的に進めています。
IP・エンタメ
ゲーム開発などを含む事業です。『ダービースタリオン2』の開発を担当するランド・ホーもグループ会社です。
M&Aでグループを拡大
自社だけで成長するのではなく、IT企業などを買収し、事業規模と技術者数を増やしてきた会社です。
今回この会社を知ったきっかけは『ダービースタリオン2』ですが、6533への投資判断で重要なのはゲーム販売本数ではありません。主力であるデジタルマーケティングとDX事業が継続的に利益を伸ばせるかを見る必要があります。
2026年上期は売上横ばいでも大幅増益
まず2026年12月期第2四半期累計の業績です。
77.98億円
前年同期比 +0.1%
8.73億円
前年同期比 +26.7%
8.44億円
前年同期比 +27.5%
5.15億円
前年同期比 +36.5%
特に注目したいのは、売上収益がほとんど増えていないにもかかわらず、営業利益が26.7%増えている点です。
単純にM&Aで会社を増やして売上規模を拡大しているだけではなく、既存事業の利益率改善も進んでいます。
現在のOrchestra Holdingsで評価したいのは、売上成長よりも収益性改善です。今後売上成長まで再加速すれば、営業利益の伸びがさらに強くなる可能性があります。
2026年通期は営業利益16億円を計画
上期終了時点で営業利益は8.73億円まで積み上がっており、通期16億円に対する進捗率は約55%。
利益面では順調です。
一方、売上は77.98億円なので175億円計画に対して約45%。下期に売上を伸ばせるかがポイントになります。
5月に買収したSALTOの寄与が下期ではより大きくなるため、次の第3四半期決算はかなり重要です。
株価1,152円なら予想PERは約11.2倍
2026年9月4日の終値は1,152円。
会社予想EPS102.54円を使うと、
1,152円 ÷ 102.54円 ≒ 11.2倍
となります。
利益が2桁成長している企業として見ると、PER11倍台は決して高くありません。
ただし、この会社の過去の利益推移を見ると、「EPSが毎年10%ずつ安定して増える会社」ではないことも分かります。
そのため、PER11倍だから自動的に割安と判断するのは少し危険です。
長期業績を見ると右肩上がりだが、きれいな成長ではない
Orchestra Holdingsの長期業績を見ると、会社の規模自体はかなり大きくなっています。
上場当時は現在よりかなり小さな会社でした。
事業規模を拡大しながら利益も成長。
業績が大きく伸び、市場からも高い成長期待を受けた時期です。
売上が急減したように見えますが、ここには重要な会計変更があります。
売上は増えた一方で営業利益が約43%減少。本当に業績が悪化したのはこちらの年です。
構造改革を経て利益水準が再び回復しています。
再成長局面へ入れるかが今後の株価を左右しそうです。
2021年→2022年の売上急減は業績悪化ではない
証券会社の業績チャートだけを見ると、2021年の売上166億円から2022年に103億円へ急減しています。
最初に見ると「何か大きな事業を失ったのでは?」と思ってしまいますが、実際には違います。
2022年から「収益認識に関する会計基準」が適用され、デジタルマーケティング事業の一部について売上の計上方法が変わりました。
この会計変更によって、2022年の売上高と売上原価はそれぞれ約108.4億円減っています。
しかし、営業利益・経常利益・最終利益への影響はありません。
2022年の表示売上103.8億円だけを見ると大幅減収ですが、旧基準のグロス表示なら約212.2億円。2021年166.4億円から実態としては事業規模が拡大していました。
実際、営業利益は2021年の12.62億円から2022年には13.50億円へ増えています。
したがって、2021年→2022年の売上急落を業績悪化と判断するのは誤りです。
本当に問題だったのは2023年の大幅減益
一方、2023年は実際に利益が大きく落ち込みました。
最終利益も8.53億円から4.74億円へ大きく減少しました。
この時期はM&Aによって急速にグループを拡大した反動もあり、人材や新規事業、組織体制への投資負担が増えました。
つまりOrchestra Holdingsは、
M&Aや事業成長によって売上・利益を大きく伸ばした時期。
急拡大した組織の収益性改善やPMI、人材配置などが課題に。
利益率改善と新たなM&Aを組み合わせ、再び利益成長を狙っています。
と考えると分かりやすいでしょう。
2024年以降はIFRS移行にも注意
もうひとつ長期業績を見るときに注意したいのが会計基準です。
Orchestra Holdingsは2025年12月期からIFRS(国際会計基準)を採用しており、比較のため2024年の数字もIFRSベースへ組み替えられています。
特に重要なのがM&Aで発生するのれんです。
そのため、IFRSに移行すると営業利益が日本基準より大きく見えることがあります。
証券会社によっては過去の日本基準の数字と、IFRSベースへ組み替えられた2024年以降の数字が同じチャートに表示されます。「利益が急回復した」と判断する前に、会計基準の違いを確認する必要があります。
10年株価チャートを見ると株主リターンは弱い
ここが私がこの銘柄を簡単に「割安」と判断できない最大の理由です。
Orchestra Holdingsの株価は、2020~2021年の成長株相場で急騰しました。
2021年には一時5,000円を超える水準まで上昇しましたが、その後は大きく下落。
現在は1,100円台です。
会社の売上・利益は長期的には増えている一方、株価は約10年前と比較してそれほど大きく上昇していません。2021年の高値圏で買った投資家は現在でも大きな含み損です。
これは非常に重要です。
企業が成長していても、株を高いPERで買えば投資家は利益を得られない場合があります。
2021年は成長期待が株価に先行し、その後PERが大幅に縮小したと考えられます。
逆に現在はPER約11倍まで評価が低下しています。
つまり現在の6533は、
「成長期待で高PERだった会社が、業績の波と株価下落を経験し、低PERになった局面」
と見ることもできます。
理想的な成長株とは少し違う
私が長期投資で理想とするのは、利益が毎年少しずつでも積み上がる企業です。
例えばEPSが、
50円 → 60円 → 70円 → 85円 → 100円 → 120円
のように安定して伸び、配当もそれに合わせて増えていく企業です。
Orchestra Holdingsは少し違います。
成長するときは大きく伸びますが、
成長 → M&A → 投資負担増 → 利益低下 → 構造改革 → 再成長
という波があります。
市場がOrchestra Holdingsに高いPERを与えていない背景には、「今期EPS102円が来期110円、120円、130円と安定的に伸びていくのか」という不確実性もあると考えられます。
配当はかなり魅力的な変化
一方、株主還元は明確に改善しています。
2025年の年間配当は12円でしたが、2026年は30円を予想しています。
- 普通配当:25円
- 上場10周年記念配当:5円
- 合計:30円
特に評価したいのは、記念配当ではなく普通配当自体を12円から25円へ引き上げた点です。
さらに会社は、今後の株主還元について累進配当を基本方針としています。
現在株価1,152円に対して30円なら、予想配当利回りは約2.6%。
高配当株とは言いにくいものの、利益成長と増配を組み合わせられれば長期投資にはプラス材料です。
15,000円の株主優待は魅力的だが、私は評価を割り引く
Orchestra Holdingsでは、200株以上を1年以上継続保有する株主を対象に、年1回15,000円分のデジタルギフトを贈る株主優待制度があります。
現在株価で200株なら約23万円なので、優待だけを単純計算するとかなり高い利回りになります。
Amazonギフトカード、PayPay、楽天ポイント、QUOカードPay、PlayStation Storeチケットなど幅広い交換先が用意されています。
ただし、この優待には注意が必要です。
株主優待制度は2025年11月に新設されたばかりです。2026年12月31日が初回基準日で、まだ長期の実施実績はありません。
そのため私は、15,000円優待を将来の投資リターンに完全には織り込みません。
「優待があるから買う」のではなく、
優待がなくても本業・配当・バリュエーションだけで保有できるか
を基準にしたいところです。
M&Aは成長源であると同時に最大のリスク
Orchestra Holdingsの成長戦略で外せないのがM&Aです。
IT・DX関連企業を買収して技術者や顧客基盤を増やし、グループ全体を拡大しています。
2026年にはシステム開発会社SALTOもグループへ加わりました。
M&Aは自社だけで人材を採用するより速く事業規模を拡大できる一方で、問題もあります。
- 買収価格が高すぎる可能性
- 買収後に期待通り利益が出ない可能性
- 組織統合に時間と費用がかかる
- 借入金が増える
- のれんが積み上がる
特にOrchestra HoldingsのようなM&A型企業では、売上成長だけを見るのでは不十分です。
買収した会社が利益を生み、EPSを増やしているかを見る必要があります。
のれんが大きい点は注意したい
M&Aによって発生するのれんは、将来の利益を期待して支払った買収プレミアムとも言えます。
買収先が期待通り成長している間は問題ありません。
しかし業績が大幅に悪化すると、IFRSではのれんの減損を計上する可能性があります。
毎年の償却費がなくなるため営業利益は日本基準より良く見えやすくなりますが、買収先の価値が低下すれば減損損失を一度に計上する可能性があります。
したがって、今後M&Aを続けるなら、のれん残高と買収企業の収益性を毎年確認したいところです。
プライム市場の上場維持基準も特殊な材料
Orchestra Holdingsは東証プライム市場に上場していますが、2025年末時点ではプライム市場の上場維持基準の一つである流通株式時価総額100億円を満たしていませんでした。
流通株式時価総額は約36億円でした。
上場維持基準を満たせないからといって、会社の事業が危ないという意味ではありません。プライム市場からスタンダード市場へ変更する選択肢もあります。
ただし、プライム市場を対象とした機関投資家や指数連動資金の需要を考えると、市場変更は株価評価に影響する可能性があります。
また、最近の大幅増配や株主優待の新設を見ると、会社が株価や個人株主数を強く意識していることは間違いありません。
だからこそ、高額優待については「ずっと続くもの」と考えない方が安全でしょう。
『ダービースタリオン2』は6533の大きな業績材料になる?
今回Orchestra Holdingsを知ったきっかけが『ダービースタリオン2』なので、この点も確認しておきます。
『ダービースタリオン2』の開発を担当しているランド・ホーはOrchestra Holdingsのグループ会社です。
ただし、ゲームの発売元は別会社であり、ダビスタ2の販売価格や販売本数がそのままOrchestra Holdingsの売上になるわけではありません。
ダビスタ2がヒットすればランド・ホーの開発実績や今後の受注にはプラスになる可能性があります。しかし6533全体の投資判断では、デジタルマーケティングとDX事業の方がはるかに重要です。
ランド・ホーについては、
- コンシューマゲーム案件を継続受注できるか
- スマートフォンゲーム以外へ開発領域を広げられるか
- Orchestraグループ入り後に収益性が改善するか
- IP・エンタメ事業全体を安定黒字化できるか
という視点で確認したいと思います。
Orchestra Holdingsの投資メリット
現在の利益成長は強い
2026年上期は営業利益26.7%増、最終利益36.5%増。収益性改善が進んでいます。
PER約11倍
現在の利益が維持・成長するなら、バリュエーションには一定の割安感があります。
普通配当を大幅増額
12円から25円へ普通配当を引き上げ、累進配当方針も導入しました。
DXという成長市場
企業のクラウド・AI・DX需要を取り込める事業基盤があります。
Orchestra Holdingsの投資リスク
利益成長が不安定
長期では成長しているものの、2023年のような大幅減益を経験しています。
M&Aとのれん
買収が成長源である一方、買収先の不振や減損リスクがあります。
長期株価実績が弱い
会社の成長ほど株価は伸びておらず、2021年高値からは大幅に下落しています。
優待実績が浅い
15,000円優待は魅力的ですが、新設されたばかりで継続性を判断できません。
会計基準で数字が見えにくい
2022年の収益認識変更、2025年のIFRS移行があり、長期データを単純比較しにくい会社です。
プライム市場基準
流通株式時価総額の基準未達が続いており、市場区分変更の可能性も確認しておきたいところです。
私の投資評価|今は「監視銘柄」にしたい
最初にPER11倍、利益成長、大幅増配だけを見たときはかなり魅力的に感じました。
しかし10年チャートと長期業績まで調べると、評価は少し慎重になります。
会社そのものは成長しています。
ただし、
- 利益成長に波がある
- M&Aへの依存度が高い
- 長期の株価上昇実績が弱い
- 会計基準変更で業績比較が難しい
という特徴があります。
「PER11倍だから安い」と判断するのではなく、2026年から本当に再成長局面へ入ったのかを数四半期確認したい銘柄です。SALTO買収後も利益率を維持し、EPS100円台を継続的に伸ばせるなら評価はかなり変わります。
今後確認したい5つのポイント
- 第3四半期決算でSALTOを含むDX事業が成長しているか
- 通期営業利益16億円を達成・上振れできるか
- 2027年もEPS100円超からさらに成長できるか
- のれん・借入を増やしながら利益率を維持できるか
- 普通配当25円以上を維持・増配できるか
特に重要なのはEPSです。
今期だけ102円を達成するのではなく、
102円 → 110円 → 120円 → 130円
と数年間安定的に成長できれば、現在のPER11倍という評価自体が見直される可能性があります。
まとめ|ダビスタ2を調べていたら面白い銘柄に出会ったが、投資判断は簡単ではない
今回は『ダービースタリオン2』の開発会社ランド・ホーを調べたことから、親会社のOrchestra Holdingsを知りました。
調べてみると、ゲーム会社の親会社というより、デジタルマーケティングとDXを主力とする成長企業です。
2026年上期は営業利益26.7%増、親会社帰属利益36.5%増。会社予想EPS102.54円に対して現在株価ならPERは約11.2倍です。
普通配当も12円から25円へ大幅増額し、累進配当を基本方針とした点は評価できます。
一方、長期業績を見ると成長は決して一直線ではありません。
2022年の売上急減は会計基準変更によるものでしたが、2023年には実際に大幅減益。さらに2025年からIFRSへ移行したことで、のれん償却の扱いも変わっています。
そして何より、10年株価チャートを見ると、企業規模の拡大ほど株主が報われてきたとは言いにくい状況です。
そのため現時点では、
「明らかな割安株だから買う」ではなく、「再成長が本物なら面白い監視銘柄」
というのが私の評価です。
ダビスタ2から偶然見つけた会社ですが、次の決算も継続して追ってみたいと思います。
- Orchestra Holdings 決算短信・決算説明資料
- Orchestra Holdings 有価証券報告書
- Orchestra Holdings 株主還元・株主優待資料
- Orchestra Holdings 中期事業方針
- 日本取引所グループ 上場維持基準資料
本記事は公開情報をもとに筆者が企業を分析したものであり、特定銘柄の購入・売却を推奨するものではありません。業績予想、配当、株主優待、株価等は今後変更される可能性があります。投資判断は最新の決算資料・適時開示等を確認したうえで、ご自身の判断で行ってください。



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