最近、SaaSやソフトウェア企業の株価が以前ほど評価されなくなっているように感じます。 AIエージェントの普及によって「既存のSaaSはAIに置き換えられるのではないか」という警戒感もあり、数年前まで高いPERが許容されていた企業でも評価が大きく下がっています。
しかし、株価が人気を失っていることと、企業の収益力が悪化していることは必ずしも同じではありません。
今回取り上げるのは、そんな中で私が気になった小型IT株の ハンモック(173A)とサイバーリンクス(3683)です。
この2社に共通するのは、PER10倍前後という低い評価に対して、 継続課金型の収益、利益成長、株主還元の強化といった長期投資家にとって興味深い特徴を持っていることです。
私はすでにサイバーリンクスを保有しています。 ハンモックについてもマネックス証券の銘柄スカウターなどで業績を確認していて、 「この内容でPER10倍台なのか」と気になり、今回改めて2社を比較してみました。
先に結論を書くと、両社は同じ「小型IT株」でもかなり性格が違います。
- ハンモック:高収益・高リカーリング・高配当。成長余地に期待するタイプ
- サイバーリンクス:食品流通や自治体に深く入り込む、競争優位と安定性を重視するタイプ
どちらが長期投資に向いているのか、私が普段重視している 「利益成長・配当・財務・競争力・将来性」という視点から見ていきます。
※株価・PER・配当利回りなどの市場指標は原則として2026年9月8日終値時点。将来の業績・配当を保証するものではありません。
まず2社を比較|どちらもPER10倍前後
| 項目 | ハンモック | サイバーリンクス |
|---|---|---|
| 証券コード | 173A | 3683 |
| 市場 | 東証グロース | 東証スタンダード |
| 株価 | 1,515円 | 1,110円 |
| 時価総額 | 約66億円 | 約129億円 |
| 予想PER | 約10.9倍 | 約9.4倍 |
| PBR | 約2.05倍 | 約1.27倍 |
| ROE | 20%超 | 約15% |
| 予想1株配当 | 65円 | 35円 |
| 予想配当利回り | 約4.29% | 約3.15% |
PERだけを見れば、どちらも現在の日本株の中では低めです。 特に興味深いのは、単に業績が低迷しているためPERが低いわけではないことです。
ハンモックはクラウド事業が伸びていますし、 サイバーリンクスも2026年上期は大幅増益となっています。
つまり今回の2社を見るポイントは、 「PERが低い=危ない会社」なのか、それとも「まだ市場から十分評価されていない会社」なのか というところにあります。
ハンモックとはどんな会社?
ハンモックは1994年設立の法人向けソフトウェアメーカーです。 2024年4月に東証グロース市場へ上場したため、上場企業としての歴史はまだ浅い会社です。
事業は大きく3つあります。
- ネットワークソリューション:AssetViewなどIT資産管理・セキュリティ
- セールスDX:ホットプロファイルなど名刺管理・営業支援
- AIデータエントリー:AI-OCRなどデータ入力効率化
中でも中心となるのが「AssetView」です。 企業内のPCやソフトウェア、操作ログなどを管理し、情報漏洩対策やセキュリティ管理まで行う製品です。
会社で何百台、何千台というPCを管理する場合、こうしたシステムは一度業務に組み込まれると簡単には変更しにくくなります。 そのため一般的なアプリよりも顧客が継続利用しやすいという特徴があります。
ハンモックの大きな魅力は「リカーリング売上」
ハンモックを調べていて私が特に気になったのが、 リカーリング売上比率の高さです。
「リカーリング」とは、英語のRecurring(繰り返す)から来た言葉で、 月額利用料、年間利用料、保守料金などのように継続して発生する売上を意味します。
2027年3月期第1四半期では、ハンモックの売上高に占める リカーリング売上比率は89.3%まで上昇しています。
つまり売上の約9割が、毎年ゼロから案件を取り直さなければならない売上ではなく、 既存顧客から継続的に得られる収益になっています。
- 翌年の売上を予測しやすい
- 業績が安定しやすい
- 顧客が増えるほど売上が積み上がる
- 新規営業だけに依存しなくてよい
AssetViewのクラウド化がかなり進んでいる
さらに注目したいのが、主力ネットワークソリューションのクラウド化です。
2027年3月期第1四半期のクラウドサービス売上は 前年同期比27.7%増。 クラウドサービスARRは15億6,500万円、前年同期比26.6%増となりました。
ARRとは「Annual Recurring Revenue」の略で、 現在契約している継続収益を年間換算した金額です。
会社全体の売上成長率は一桁台ですが、 成長しているクラウド部分だけを見ると20%を超えています。
私はここをハンモックの重要なポイントだと考えています。
従来のオンプレミス型ソフトからクラウドへ移行すると、 継続課金収入が増え、顧客数が積み上がるほど収益基盤が厚くなる可能性があります。
直近1Qも増収増益
| 2027年3月期1Q | 実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 12.12億円 | +6.6% |
| 営業利益 | 1.21億円 | +22.2% |
| 経常利益 | 1.25億円 | +34.7% |
| 四半期純利益 | 0.81億円 | +29.9% |
売上高の伸びは6.6%ですが、営業利益は22.2%増。 利益成長が売上成長を上回っている点は好印象です。
ハンモックは配当政策も大きく変わった
さらに私がハンモックを面白いと思った理由が、2026年8月に発表された配当方針の変更です。
新しい配当方針
- 年間配当性向50%を中長期的な目標
- DOE5%を配当の下限
- 中間・期末の年2回配当へ
2027年3月期の年間配当予想は、 従来予想の45円から65円へ引き上げられました。
2026年3月期の40円から見れば25円の増配です。
DOEは「純資産に対してどれくらい配当を出すか」を見る指標です。 利益が多少上下しても純資産を基準に配当を考えるため、 配当の安定性を重視する投資家には注目しやすい指標です。
利益成長に連動する配当性向50%と、配当の下支えになるDOE5%を組み合わせている点は、 増配株を長期保有したい私にはかなり魅力的に映ります。
一方のサイバーリンクスはどんな会社?
サイバーリンクスは和歌山県に本社を置くIT企業です。
名前だけを見ると一般的なソフトウェア会社にも見えますが、 実際には生活インフラに近い領域へ深く入り込んでいる企業です。
主な事業は4つあります。
- 流通クラウド事業:食品スーパー・食品卸向けシステム
- 官公庁クラウド事業:地方自治体向けDX・システム
- トラスト事業:電子認証・デジタル証明書
- モバイルネットワーク事業:ドコモショップ運営など
食品流通という狭い分野に深く入り込んでいる
私がサイバーリンクスの強みだと考えているのが流通クラウド事業です。
同社の資料によると、食品スーパーでは同社サービスの利用割合が約30%。 加工食品卸では、売上上位10社のうち8社への導入実績があります。
スーパーの基幹システムには、 発注、仕入れ、在庫、売上管理、EDIなど重要な業務が組み込まれています。
一度導入されたシステムを他社へ入れ替えるには大きなコストと手間がかかります。
単に「クラウドだから強い」のではなく、 食品流通という業界の業務そのものに深く入り込んでいることが競争力につながっていると私は考えています。
ハンモックのAssetViewにもスイッチングコストはありますが、 SKYSEA、LANSCOPEなどIT資産管理分野には多くの競合企業があります。
競争優位性だけを比べるなら、私は現時点では サイバーリンクスを一段高く評価します。
サイバーリンクスにも「定常収入」がある
サイバーリンクスでは、ハンモックの「リカーリング売上」に近いものを 「定常収入」という指標で管理しています。
情報処理料や保守料など、毎年継続的に得られる収入です。
2025年度の定常収入は87.3億円。 会社は2030年度に126億円まで伸ばす計画です。
| サイバーリンクス | 2025年度実績 | 2030年度計画 |
|---|---|---|
| 売上高 | 181億円 | 221億円 |
| 定常収入 | 87億円 | 126億円 |
| 経常利益 | 18.5億円 | 30億円 |
ここで興味深いのは、売上高の伸び以上に利益を伸ばす計画になっていることです。
2025年度から2030年度までに、 売上高は約22%増ですが、経常利益は約61.5%増を目指しています。
定常収入の積み上げとクラウドサービスの規模拡大によって、 利益率を改善していく計画と見ることができます。
2026年上期は大幅増益
足元の業績も好調です。
| 2026年12月期上期 | 実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 101.60億円 | +14.8% |
| 営業利益 | 14.46億円 | +45.9% |
| 経常利益 | 14.43億円 | +45.8% |
| 純利益 | 9.67億円 | +43.5% |
かなり強い数字ですが、注意したい点もあります。
今回の大幅増益には官公庁クラウド事業のDX案件なども大きく寄与しています。 そのため、毎年40~50%の利益成長が続くと考えるのは楽観的でしょう。
私は四半期の高成長率よりも、 2030年に向けて定常収入がどれだけ積み上がっていくかを重視して見ています。
サイバーリンクスも増配姿勢が強い
サイバーリンクスの配当推移もかなり変化しています。
| 年度 | 1株配当 |
|---|---|
| 2021年度 | 12円 |
| 2022年度 | 13円 |
| 2023年度 | 13円 |
| 2024年度 | 17円 |
| 2025年度 | 30円 |
| 2026年度予想 | 35円 |
さらに中期経営計画では、 「累進配当の継続」と「配当性向の引き上げ」を掲げています。
会社資料では2030年度に向け、1株配当を70円程度へ引き上げていくイメージも示されています。 もちろん中期計画なので達成が保証されているわけではありませんが、 利益成長を株主へ還元する方向性は明確です。
では、なぜPER10倍前後しかないのか?
ここまで見ると、 「業績が伸びて、ストック収益もあり、配当も増えているのに、なぜPER10倍前後なのか?」 という疑問が出てきます。
私はいくつか理由があると考えています。
- 時価総額が小さい
- 売買流動性が低い
- SaaS・ソフトウェア株全体への評価が低下している
- AIによる既存ソフト代替への警戒
- 知名度が低い
- 機関投資家が買いにくい
特にハンモックは出来高が非常に少ない
2026年9月8日のハンモックの出来高は2,000株、 売買代金は約306万円でした。
数日前には出来高700株の日もあり、8月28日は100株しか売買されていません。
時価総額約66億円に加え、この流動性では大型の機関投資家が参加するのは簡単ではありません。
サイバーリンクスも決して流動性の高い銘柄ではありませんが、 9月8日の出来高は9,100株で、ハンモックよりは取引されています。
出来高が少ない株は、買いたい時に買えないだけでなく、 悪材料が出た時に売りたい価格で売れない可能性もあります。 購入する場合は成行注文ではなく、板を確認しながら指値を使うなど注意が必要です。
「SaaSはAIに食われる」のか?
現在ソフトウェア株を見る上で無視できないのが生成AIです。
生成AIやAIエージェントが普及すれば、 単純な文章作成、データ整理、営業支援など、一部のSaaSが代替される可能性はあります。
そのため私は「SaaSだから成長する」とは考えていません。
重要なのは、 そのソフトが企業の業務にどこまで深く入り込んでいるかです。
ハンモックはAIが追い風になる可能性もある
ハンモックのAssetViewは、 PC・端末管理、ソフトウェア資産、操作ログ、脆弱性、パッチ管理など、 企業のIT運用そのものに関係しています。
AIが普及したからといって、企業がPC管理やセキュリティ管理をやめるわけではありません。
むしろ生成AI利用が増えるほど、 情報漏洩、アクセス管理、セキュリティガバナンスの重要性は高まる可能性があります。
ハンモック自身もAssetView Cloud+を中心に、 MDR、リスク検知、SaaS管理、生成AIガバナンスなどへ事業領域を広げる方針です。
一方、ホットプロファイルなど営業DX分野は競合も多いため、 AI機能を追加するだけでは十分な差別化にならない可能性があります。
AssetViewがどこまでセキュリティ分野へ拡大できるかは、 今後かなり重要だと考えています。
サイバーリンクスは業界知識そのものが強み
サイバーリンクスの場合は少し違います。
食品スーパーの発注、仕入れ、在庫、EDIや、 地方自治体の文書管理・行政DXなどは、 単純な汎用AIを導入すればすべて代替できるものではありません。
食品流通業界特有の業務知識や既存顧客との関係、 長年積み上げたシステムが競争力になります。
むしろAI需要予測や自治体システムへのAI組み込みによって、 既存サービスを強化する側に回る可能性があります。
私の投資基準で2社を比較
私は単純に配当利回りが高いだけでは投資しません。
現在は主に、 利益成長、EPS、増配、配当余力、財務、競争力、将来性 を確認しています。
| 評価項目 | ハンモック | サイバーリンクス |
|---|---|---|
| 利益成長 | ★★★★☆ | ★★★★☆ |
| ストック収益 | ★★★★★ | ★★★★☆ |
| 収益性 | ★★★★★ | ★★★★☆ |
| 競争優位性 | ★★★☆☆ | ★★★★★ |
| 増配期待 | ★★★★★ | ★★★★★ |
| 現在の配当利回り | ★★★★★ | ★★★★☆ |
| 割安感 | ★★★★☆ | ★★★★★ |
| 事業安定性 | ★★★★☆ | ★★★★★ |
| 流動性 | ★★☆☆☆ | ★★★☆☆ |
結局どちらを選ぶ?
2社を比較してみると、私はこう整理しています。
ハンモック
高収益+高リカーリング+高配当
AssetView Cloud+の成長が続けば、会社全体の成長率以上に利益が伸びる可能性があります。 現在の利回り4%台とDOE5%も魅力です。 一方で競合の多さと極端な流動性の低さには注意が必要です。
サイバーリンクス
業界特化+安定収益+累進配当
食品流通や自治体という業務に深く入り込んでいることが強みです。 2030年度の経常利益30億円と定常収入126億円を実現できれば、現在のPER10倍弱という評価には見直し余地があります。
「会社としての安心感・競争優位性」を重視するなら、 現時点ではサイバーリンクスをやや上に評価します。
一方、 「現在の配当利回り・資本効率・クラウド成長・将来の評価見直し余地」を重視するなら、 ハンモックはかなり面白いと感じています。
まとめ|不人気な小型IT株だからこそ数字を見たい
SaaSやソフトウェア企業は、数年前のように「クラウド企業」というだけで高いPERが付く時代ではなくなっています。
しかし私は、それ自体を悪いことだとは考えていません。
むしろ、
- すでに黒字
- 利益が伸びている
- 継続収益が積み上がる
- 財務が悪くない
- 配当を増やしている
- それでもPER10倍前後
という会社を選べるのであれば、 以前より長期投資しやすい環境になったとも考えられます。
ハンモックもサイバーリンクスも派手な人気株ではありません。 出来高も少なく、SNSで毎日のように話題になる銘柄でもありません。
しかし、私はこうした 「業績は悪くないのに市場ではあまり注目されていない企業」 を探すのが個別株投資の面白さの一つだと思っています。
サイバーリンクスについては引き続き保有しながら業績を確認していく予定です。 ハンモックについても、AssetView Cloud+のARR、リカーリング売上、営業利益、配当の推移を追っていきたいと思います。
- ハンモック:AssetViewクラウドARRの成長率
- ハンモック:リカーリング売上比率と解約率
- ハンモック:DOE5%を含む増配の継続性
- サイバーリンクス:定常収入の積み上がり
- サイバーリンクス:2030年度経常利益30億円への進捗
- 両社:AIを競争力向上に使えるか
参考資料
本記事は公開情報をもとに筆者個人の考えをまとめたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。 株価、業績予想、配当などは変更される可能性があります。 投資判断は最新の決算短信・適時開示等をご確認のうえ、ご自身の判断と責任でお願いいたします。



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