日本の金利環境が大きく変わってきました。
2026年9月1日に行われた10年国債の入札では、平均落札利回りが2.995%となり、ついに「10年国債利回り3%」が現実になっています。
すると高配当株投資をしている人なら、こんな疑問を持つかもしれません。
私自身、高配当だけではなく、増配や利益成長を重視して株式投資を続けています。今回は「国債3%時代」に高配当株4%が本当に魅力的なのか、改めて考えてみたいと思います。
そもそも「国債利回り3%」とは何なのか
最初に整理しておきたいのが、ニュースで報じられる「10年国債利回り3%」と、個人向け国債の金利は同じではないという点です。
2026年9月1日の10年国債入札では、第383回10年利付国債の平均落札利回りが2.995%となりました。
表面利率は2.7%ですが、額面100円より安い価格で発行されるため、満期まで保有した場合の利回りは約3%になります。
| 2026年9月時点 | 金利・利回り | 特徴 |
|---|---|---|
| 10年国債 入札平均利回り | 2.995% | 市場の10年金利に近い水準 |
| 新窓販国債10年 | 2.943% | 個人も購入可能。途中売却では価格変動あり |
| 個人向け国債 変動10年 | 1.95% | 半年ごとに適用金利が変わる |
| 個人向け国債 固定5年 | 2.24% | 5年間固定 |
| 個人向け国債 固定3年 | 1.96% | 3年間固定 |
つまり「国債が3%になった」と聞いても、普通の個人投資家が個人向け国債を買えば、そのまま3%もらえるわけではありません。
個人向け国債なら現在はおおむね2%前後です。
ただし、新窓販国債の10年物なら応募者利回りは2.943%となっており、10年近く保有する前提なら、個人でも3%近い国債へ投資することは可能になっています。
「利回り2.943%」と「利率2.7%」は少し違う
ここも少し分かりにくいところです。
2026年9月の新窓販10年国債は、表面利率が年2.7%です。一方、応募者利回りは年2.943%となっています。
これは額面100円の国債を98円16銭で購入し、満期には100円で償還されるためです。
利回り=購入価格と満期時の償還差益なども含めた収益率
「国債3%」といっても、毎年3%の現金がそのまま利息として振り込まれるという意味ではない点には注意が必要です。
高配当株4%と国債3%なら、差はわずか1%
では、本題です。
仮に10年国債が3%、高配当株が4%だったとしましょう。
利回りだけを見ると、差はわずか1%ポイントです。
株式には国債にはないリスクがあります。
- 株価が20%、30%と下落する可能性がある
- 業績悪化で減配する可能性がある
- 景気後退の影響を受ける
- 企業そのものの競争力が低下することもある
- 最悪の場合は倒産する可能性もある
という考え方には十分な合理性があります。
金利上昇は高配当株にとって無視できない
低金利時代には、預金や国債ではほとんど利息を得られませんでした。
その環境では、配当利回り4%の株は非常に魅力的に見えます。
しかし安全性の高い国債でも2~3%を得られる時代になると、投資家は以前より高いリターンを株式に求めるようになります。
国債0~1% → 配当4%はかなり魅力的
金利上昇時代
国債2~3% → 配当4%だけでは物足りなくなる
この意味では、私は「高配当である」というだけの株の魅力は以前より低下していると考えています。
それでも私が国債だけではなく株を持ちたい理由
では、国債利回りが3%近くまで上昇したら、株式投資をやめて国債中心にすべきなのでしょうか。
私はそうは考えていません。
大きな理由の一つがインフレです。
固定金利の国債は、満期まで保有すれば受け取る金額をかなり予測しやすいという大きなメリットがあります。
一方で、物価が上がればお金そのものの購買力は低下します。
たとえば年3%の利回りがあっても、物価が毎年2%上昇していれば、実質的なリターンは単純計算では約1%しか残りません。
物価上昇率が3%なら、税金まで考えると実質的な購買力が増えない可能性もあります。
シーゲル博士が示した「長期では株式が強かった」という事実
ここで思い出すのが、ジェレミー・シーゲル博士の研究です。
シーゲル博士は『Stocks for the Long Run』で知られる長期投資研究の第一人者で、1800年代初頭からの株式・債券・短期国債・金などの実質リターンを比較しています。
Whartonで紹介された長期データでは、1802年以降の米国株の実質リターンは長期間で年6~7%程度という非常に高い水準を維持してきたとされています。
| 資産 | 歴史的な平均実質リターン |
|---|---|
| 株式 | 約6.6% |
| 長期債券 | 約3.6% |
| 短期国債 | 約2.8% |
| 金 | 約0.5% |
※シーゲル博士がWhartonで紹介した1802~2009年の米国市場に関する実質リターン。将来も同じリターンが得られることを保証するものではありません。
特に重要なのは、これらがインフレを差し引いた実質リターンだという点です。
現金や固定金利債券は、額面上のお金が減らなくてもインフレによって購買力が低下する可能性があります。
一方、企業は商品やサービスの価格を引き上げたり、売上や利益を成長させたりすることができます。
長い時間をかけて企業利益や配当が成長することで、株式はインフレを乗り越えてきた――というのが、シーゲル博士の長期データから読み取れる重要なポイントだと思います。
ただし「株はインフレになれば上がる」という意味ではない
ここは誤解しないようにしたいところです。
「株式は長期的にインフレに強かった」ということと、
という話はまったく同じではありません。
むしろ短期的には、
↓
中央銀行が利上げ
↓
市場金利上昇
↓
株式の要求リターン上昇
↓
PER低下・株価下落
という動きが起こります。
シーゲル博士自身も、株式の短期リターンは非常に変動が大きい一方で、長期間で見ると実質リターンが驚くほど安定してきたことを指摘しています。
と考える方が分かりやすいと思います。
高配当株4%でも「増配する4%」なら話は変わる
そして、今回もっとも重要だと思っているのがここです。
同じ配当利回り4%でも、
- 10年間ずっと配当が変わらない4%株
- 利益が成長し、毎年増配していく4%株
では、長期的な投資成果が大きく変わる可能性があります。
100万円投資して配当が毎年5%増えたら?
たとえば100万円で配当利回り4%の株を購入したとします。
最初の年間配当は4万円です。
その企業が利益を伸ばしながら、配当を毎年5%ずつ増やしたと仮定すると、次のようになります。
| 保有期間 | 年間配当 | 取得額100万円に対する利回り |
|---|---|---|
| 1年目 | 4万円 | 4.0% |
| 5年目 | 約4万8,600円 | 約4.9% |
| 10年目 | 約6万2,100円 | 約6.2% |
10年目には、最初に投資した100万円に対して年間約6.2%の配当を受け取る計算になります。
もちろん毎年5%増配できる保証はありません。
しかし、これが固定金利の国債と増配株との大きな違いです。
利回りは購入時点でかなり予測しやすい
安全性は高いが、企業のような利益成長はない
増配株
株価下落・減配リスクがある
その一方、利益成長によって配当そのものが増える可能性がある
本当に大切なのは配当ではなく「配当を生み出す利益」
ただし、増配率だけを見れば良いわけでもありません。
私が株を見るときに重要だと思っているのは、増配の裏側にあるEPS(1株当たり利益)の成長です。
↓
営業利益・純利益成長
↓
EPS成長
↓
配当余力拡大
↓
増配
という流れになっているなら、かなり健全です。
反対に利益がまったく増えていないのに、配当性向だけを引き上げて増配している企業は、いつか限界が来ます。
成長しない高配当株4%は以前より魅力が落ちた
私が今の金利環境で特に注意したいのは、
- 配当利回り4%
- EPSは何年も横ばい
- 配当もほぼ横ばい
- 売上も成長していない
といったタイプの高配当株です。
国債利回りがほぼゼロだった時代なら、4%の配当だけでも十分な魅力がありました。
しかし国債で2~3%の利回りを得られるなら、成長しない企業の4%に株価変動リスクを取る意味は以前より小さくなります。
さらに物価が上昇すれば、10年後の4万円の価値は今の4万円より低くなります。
国債3%時代に私が見たい高配当株
今後は「配当利回りが高い」というだけではなく、次のような企業をより重視したいと考えています。
増配の原資となる利益そのものが増えているか。
現在の利回りだけではなく、将来の配当成長を期待できるか。
無理な配当ではなく、利益成長に沿った株主還元になっているか。
金利上昇によって支払利息が急増する企業ではないか。
値上げや事業成長によって利益を維持・拡大できるか。
この意味では、高金利時代になったことで、私の中ではむしろ「高配当+増配+利益成長」という考え方の重要性が増しているように感じます。
国債か株か、どちらか一つを選ぶ必要もない
ここまで比較してきましたが、国債と株式は必ずしも二者択一ではありません。
近いうちに使う予定のお金や、値下がりさせたくない資金なら、2%前後の個人向け国債は以前よりかなり魅力的になっています。
一方、10年、20年と運用しながら資産と配当を成長させたい資金なら、株式にも依然として大きな魅力があります。
| 国債 | 増配株 | |
|---|---|---|
| 価格変動 | 比較的小さい※ | 大きい |
| 収入の予測 | しやすい | 不確実 |
| 増配 | なし | 可能性あり |
| 元本成長 | 基本的に期待しにくい | 企業成長次第 |
| インフレへの対応力 | 固定金利では弱くなりやすい | 長期では利益成長で対応する余地 |
※市場で売買する国債は金利変動によって価格が変動します。個人向け国債と通常の国債では商品性が異なります。
まとめ|国債3%時代ほど「高配当」だけでは足りない
- 2026年9月、10年国債の入札利回りは約3%まで上昇
- ただし個人向け国債は現在1.9~2.2%台
- 新窓販10年国債なら3%近い利回りも可能
- 国債3%と高配当株4%なら、単純な利回り差は小さい
- 成長しない高配当株の魅力は以前より低下している
- 一方、株式は歴史的に長期間ではインフレ後の実質リターンが高かった
- 増配とEPS成長が続けば、取得価格に対する配当利回りは上昇していく
- 高金利時代ほど「高配当+増配+利益成長」が重要になる
国債で2~3%の利回りを得られるようになったことは、個人投資家にとって決して悪いことではありません。
むしろ安全資産にも選択肢が増えたという意味では、歓迎できる面があります。
その一方で、株式投資では以前以上に「なぜ国債ではなく、この企業に投資するのか」を考える必要が出てきました。
私自身は、単純に利回りが4%、5%あるから買うのではなく、利益が伸び、その利益を原資に配当も増えていく企業を長く保有したいと考えています。
国債利回り3%時代は、高配当株投資が終わる時代ではありません。
- 財務省「10年利付国債(第383回)の入札結果」
- 財務省「現在募集中の個人向け国債・新窓販国債」
- 財務省「新窓販国債10年 令和8年9月債 発行条件」
- Knowledge at Wharton / Jeremy Siegelによる長期株式リターン研究の解説
- Wharton Magazine / Jeremy Siegelの株式・債券・金の長期実質リターン比較



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