先日、個人投資家のテスタさんの切り抜き動画を見ていて、気になる話がありました。
私が見た動画では、投資資金がまだ少ない段階では、長期間株を保有するバリュー投資は資金効率があまり良くないという趣旨の話がされていました。
最初に聞いた時は、私自身の経験とは少し違うようにも感じました。
私はこれまで、市場全体が大きく下落した時期や、株価が安かった時に買った銘柄が、その後大きな含み益になった経験を何度もしているからです。
ただ、動画の内容を整理すると、テスタさんは単純に
「バリュー投資は間違っている」
と言っているわけではないように感じました。
私が受け取った主な論点は、
資金が少ない段階で、値上がりを何年も待つ投資は効率が悪いのではないか
という「資金効率」の問題です。
また、割安に見える株がいつまでも低い評価のまま放置されている場合、そこには何らかの理由があり、バリュートラップにも注意しなければなりません。
この指摘には納得できる部分があります。
一方で、資金が少ないからといって、誰もが短期売買で資産を増やせるわけではありません。
今回は、
- 少額資金では本当にバリュー投資の効率が悪いのか
- バリュー投資と高配当株投資は何が違うのか
- 短期売買なら資産形成を速められるのか
- バリュートラップをどう見分けるのか
- 「安くなった株」と「割安になった株」の違い
- 私が現在重視している銘柄選び
これらについて、長期投資を続けてきた個人投資家の立場から考えてみます。
- テスタさんが問題にしているのは「資金効率」
- バリュー投資と高配当株投資は同じではない
- 100万円を増やす投資と、5000万円を守る投資は同じでいいのか
- 「少額なら短期売買」が誰にでも正解とは思わない
- 資産形成初期は「運用利回り」より入金額の影響が大きい
- バリュー投資で注意したい「バリュートラップ」
- PER5倍でも「割安」とは限らない
- 「安くなった株」と「割安になった株」は違う
- 市場全体の下落で優良企業まで売られることはある
- 高配当株にもバリュートラップはある
- PER8倍とPER15倍、本当にPER8倍の方が割安なのか
- 「グロース株だから高い」とも限らない
- 私が重視するのは「安い会社」より「良い会社が安くなった時」
- バリュートラップを避けるために確認したい7項目
- 最適な投資方法は資産額だけでは決まらない
- まとめ|少額資金でもバリュー投資が間違いとは限らない
テスタさんが問題にしているのは「資金効率」
例えば100万円の資金で、配当利回り4%の株を買ったとします。
100万円 × 4% = 年間配当4万円
税金を考えなかったとしても、受け取れる配当は年間4万円です。
配当を再投資すれば資産は少しずつ増えていきますが、100万円を500万円、1000万円へ増やすには長い時間がかかります。
一方、資産5000万円で同じ配当利回り4%なら、年間配当は200万円です。
5000万円 × 4% = 年間配当200万円
1億円なら年間400万円です。
ただし、ここで注意したいのは、100万円でも5000万円でも運用利回り自体は同じ4%だということです。
元本が大きい方が投資効率に優れているわけではありません。違うのは、得られる金額が生活や資産形成に与える影響です。
高配当株投資は、元本が大きくなるほど受取配当の金額が生活に与える効果も大きくなる。一方、元本が小さい段階では、配当だけで資産形成を加速させるのは難しい。
この意味では、資金が少ない段階の投資について「資金効率」を意識する考え方には納得できます。
バリュー投資と高配当株投資は同じではない
ここで整理しておきたいのが、バリュー投資と高配当株投資の違いです。
バリュー投資というと、配当を受け取りながら株価が上がるまで何年も待つ方法を想像しがちですが、必ずしもそれだけではありません。
| 投資方法 | 主な収益源 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| バリュー投資 | 割安状態の解消による値上がり | 割安な理由を見誤ること |
| 高配当株投資 | 配当・増配・値上がり | 業績悪化や減配 |
| 短期売買 | 短期間の株価変動 | 判断ミスや損失の拡大 |
実際には、これらが完全に分かれているわけではありません。
配当利回りが高く、利益や配当も成長している企業を割安な時に買えば、バリュー投資と高配当株投資の両方の性格を持ちます。
私が現在目指しているのも、このような投資です。
100万円を増やす投資と、5000万円を守る投資は同じでいいのか
仮に100万円を年率5%で運用した場合、1年間で増える金額は5万円です。
5000万円なら、同じ5%でも250万円になります。
一方、損失についても同じことがいえます。
| 運用資産 | 5%の利益 | 30%の損失 |
|---|---|---|
| 100万円 | +5万円 | ▲30万円 |
| 5000万円 | +250万円 | ▲1500万円 |
資産形成の初期段階では、多少のリスクを取って資産を増やすスピードを重視したいという考え方も理解できます。
反対に資産が大きくなってくると、大きく増やすこと以上に、大きく減らさないことが重要になります。
資産形成の段階によって、投資に求めるものは変わる
ただし、「資金が少ないならリスクを取るべき」と単純に決めることはできません。
「少額なら短期売買」が誰にでも正解とは思わない
テスタさんは短期売買で非常に大きな資産を築いた投資家です。
そのため、資金が少ない時は時間軸を短くし、資金を回転させるという考え方になるのは自然だと思います。
しかし、短期売買は簡単ではありません。
相場を見る時間、売買判断、損切り、感情の管理など、長期投資とは異なる技術が必要です。
上手な人なら100万円を120万円、150万円へ増やせるかもしれません。しかし、経験や技術が不足していれば、
と、資金そのものを減らしてしまう可能性があります。
資金効率が高いということは、見方を変えれば、利益も損失も短期間で大きくなりやすいということです。
私自身も投資を始めた頃は、十分な企業分析をせず、気になる株を売買して資金を減らした経験があります。
その後、企業業績や配当、長期保有を重視するようになり、自分の投資方法が少しずつ固まっていきました。
「増えるスピードが遅い投資」だから悪いのではありません。自分が再現できず、続けられない投資の方が問題です。
短期売買を否定するつもりはありませんが、成功した投資家の時間軸だけをまねしても、同じ結果を出せるとは限りません。
資産形成初期は「運用利回り」より入金額の影響が大きい
資金が少ない時期に資産を増やす方法は、短期売買だけではありません。
100万円を年率5%で運用して増える金額は年間5万円です。
一方、毎月3万円を追加投資できれば、年間の入金額は36万円になります。
100万円を年率5%で運用:年間+5万円
毎月3万円を追加投資:年間+36万円
もちろん、入金額は投資収益ではありません。
それでも資産形成初期では、無理に高い運用利回りを狙うより、収入を確保し、支出を管理しながら入金を続ける方が、資産増加への影響が大きい場合があります。
資金が少ないから短期売買をする、という方法だけが資産形成の近道ではない
バリュー投資で注意したい「バリュートラップ」
資金効率とは別に、テスタさんの話で特に納得できたのが、
割安で放置されている株には、放置される理由があるかもしれない
という点です。
PERが低く、PBRも低い。さらに配当利回りも高ければ、数字だけでは非常に魅力的に見えます。
しかし、市場が次のような問題を警戒しているため、低い評価のまま放置されている可能性があります。
- 将来の利益が減少する
- 減配する可能性がある
- 競争力が低下している
- 業界そのものが縮小している
- 財務状態が悪化している
- 一時的な利益でPERが低く見えている
低PERであることは、買う理由ではなく、企業を詳しく調べる出発点だと考えた方がよさそうです。
PER5倍でも「割安」とは限らない
例えば、次のような企業があったとします。
| 株価 | 500円 |
|---|---|
| EPS | 100円 |
| PER | 5倍 |
| 配当利回り | 5% |
数字だけを見ると、かなり安く見えます。
しかし、数年後にEPSが100円から50円へ減少したらどうなるでしょうか。
EPS100円 × PER5倍 = 株価500円
EPS50円 × PER5倍 = 株価250円
PER5倍という評価が変わらなくても、利益が半分になれば、株価も半分になる計算です。
「PER5倍だから安い」と買ったところから、さらに株価が下落する可能性があります。
これがバリュートラップの典型的な形です。
「安くなった株」と「割安になった株」は違う
私は、この違いをかなり重要視しています。
株価:1,000円 → 500円
EPS:100円 → 40円
株価は半値でも、企業の収益力そのものが大きく低下している。
株価:1,000円 → 700円
EPS:100円 → 105円
収益力は維持・成長しているのに、株価だけが下落している。
どちらも株価は下落していますが、中身はまったく違います。
株価が大きく下がったという事実だけでは、その株が割安になったとは判断できません。
大切なのは、なぜ株価が下がったのか
市場全体の下落で優良企業まで売られることはある
株式市場では、個別企業の業績とはあまり関係なく、多くの株が一斉に売られることがあります。
景気後退への不安、金融危機、金利上昇、地政学リスク、投資家のリスク回避などが重なると、業績の良い企業も売られます。
企業の収益力は変わっていないのに、株価だけが大きく下がる
こうした場面では、良い企業を以前より安い価格で買えることがあります。
私自身、市場全体が大きく下落した時期や、株価が安かった時に買った銘柄が、その後大きな含み益になった経験があります。
そのため、私は株価が安い時に買うこと自体が悪いとは考えていません。
企業の利益や競争力まで悪化しているのか、それとも市場全体に巻き込まれて売られているだけなのか。この見極めが重要です。
高配当株にもバリュートラップはある
バリュートラップの問題は、高配当株投資でも同じです。
株価1000円、年間配当50円なら、配当利回りは5%です。
株価が500円まで下落し、配当が同じ50円なら、表面上の配当利回りは10%になります。
株価1,000円・配当50円 → 利回り5%
株価500円・配当50円 → 利回り10%
一見すると非常に魅力的です。
しかし、市場がすでに「この50円配当は維持できない」と判断して株価を下げている可能性があります。
その後、配当が50円から20円へ減額されれば、500円で買った場合の配当利回りは4%です。
業績まで悪化すれば、株価もさらに下がるかもしれません。
高配当だから割安なのではなく、将来の減配を織り込んで株価が下がっているだけかもしれない。
高配当株を見る時も、現在の配当利回りだけではなく、
- 利益は長期的に伸びているか
- 営業キャッシュフローは安定しているか
- 配当性向に余裕があるか
- 一時的な利益で配当していないか
- 利益成長を伴った増配を続けられるか
を確認する必要があります。
PER8倍とPER15倍、本当にPER8倍の方が割安なのか
例えば、次の2社を比較してみます。
| A社 | B社 | |
|---|---|---|
| PER | 8倍 | 15倍 |
| EPS | 100円 | 100円 |
| 利益成長率 | 毎年▲10% | 毎年+15% |
現在の数字だけを見れば、A社の方が割安に見えます。
しかし、B社が毎年15%ずつ利益を成長させた場合、EPSはおおよそ、
となります。
5年後もPER15倍で評価された場合、理論上の株価は、
EPS約201円 × PER15倍 = 株価約3,015円
です。
反対にA社の利益が毎年10%ずつ減少すると、5年後のEPSは約59円まで低下します。
PER8倍のままなら、理論上の株価は約472円です。
EPS約59円 × PER8倍 = 株価約472円
もちろん、実際の株価がこの計算どおりになるわけではありません。将来も同じ成長率やPERが続く保証もありません。
ここで重要なのは、
現在のPERだけを見ても、本当に割安かどうかは分からない
ということです。
「グロース株だから高い」とも限らない
反対に、PERが高いという理由だけで、すぐに割高と判断することもできません。
PER25倍でも、利益が毎年20%程度成長する企業なら、数年後には現在の株価がそれほど高くなかったという結果になる可能性があります。
PER8倍でも利益が減り続ければ、株価が変わらなくてもPERは上昇します。分母となるEPSが減るためです。
現在のPERだけでなく、将来のEPSがどうなるのかを見る
ただし、利益成長への期待が高すぎる株は、決算が市場予想に届かなかっただけで大きく下落することがあります。
成長率が高ければ、どのような株価でも買ってよいわけではありません。成長性と購入価格の両方を見る必要があります。
私が重視するのは「安い会社」より「良い会社が安くなった時」
現在、私が銘柄を見る時に最も魅力を感じるのは、単純な低PER株ではありません。
理想は、次の条件を複数満たす企業です。
- 売上高が長期的に成長している
- EPSが伸びている
- 営業利益が成長している
- 営業キャッシュフローが安定している
- 財務に大きな問題がない
- 利益成長を伴って増配している
- 成長性に対して株価が極端に高くない
利益成長 × 増配 × 財務 × バリュエーション
PER10倍以下である必要はありません。
PER15倍でも、利益が継続的に伸びている企業なら魅力を感じます。
逆にPER5倍でも、利益が減り続けている企業には慎重になります。
バリュートラップを避けるために確認したい7項目
低PERだから買うのではなく、市場が何を警戒しているのかを考える。
単年度だけではなく、過去5年から10年程度の利益推移を見る。
コスト削減だけではなく、本業そのものが成長しているか確認する。
会計上の利益だけでなく、事業から実際に現金を生み出せているかを見る。
無理な増配ではなく、利益成長に支えられた増配なのかを見る。
企業単体だけでなく、その企業が事業を行う市場全体も確認する。
現在の指標だけでなく、将来の収益力を考える。
最適な投資方法は資産額だけでは決まらない
資産100万円の人と5000万円の人では、投資に求めるものが違う場合があります。
| 資産形成初期 | 資産形成後半 | |
|---|---|---|
| 主な目的 | 資産を積み上げる | 守りながら増やす |
| 重視するもの | 入金・成長率・継続性 | 安定性・配当・分散 |
| 大きな下落 | 損失額は比較的小さい | 失う金額が大きくなる |
ただ、資産額だけで最適な方法が決まるわけではありません。
年齢、収入、投資経験、家族構成、相場を見る時間、損失への耐性、投資の目的によっても答えは変わります。
資金が少なくても大きな値動きに耐えられない人はいます。反対に、資産が大きくても成長株への投資を続けられる人もいます。
私自身は現在、配当の一部を生活のためにも使っています。
資産形成の初期には小さく感じられた配当も、元本が大きくなると生活を支える実感のある収入になります。
そのため、今の私にとっては、短期間で資金を大きく増やすことよりも、利益と配当が成長する企業を分散して保有し、配当を受け取りながら資産を守る方法が合っています。
まとめ|少額資金でもバリュー投資が間違いとは限らない
テスタさんの話から、資金が少ない段階では資金効率を意識する必要があるという点は理解できました。
割安株を買ったまま何年も評価が変わらなければ、その間に別の投資機会を逃す可能性もあります。
また、低PERや高配当だけを理由に買うと、バリュートラップに陥る危険があります。
一方で、少額資金だから短期売買をするべきだとは思いません。
短期売買で高い収益率を継続できなければ、資金効率を上げるどころか、投資元本を減らしてしまいます。
- 低PERだけで割安と判断しない
- 高配当の理由を確認する
- 株価より先に利益の推移を見る
- 利益成長と増配の両方を重視する
- 少額期は入金を続けることも大切にする
- 自分が再現できる投資方法を選ぶ
私が現在重視しているのは、単に安い株ではありません。
利益が成長する良い会社を、無理のない価格で買う
そして配当を受け取りながら、企業の成長を長期的に待つ。
短期売買より増えるスピードが遅い時期はあっても、私にはこの方法の方が続けやすく、再現性も高いと感じています。
バリュー投資、グロース株投資、高配当株投資、短期売買のどれか一つが、すべての人にとって正解になるわけではありません。
資産額だけで投資方法を決めるのではなく、自分の経験、目的、性格に合った方法を続けることが、結果的には最も効率のよい資産形成につながるのではないでしょうか。


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