最近、日本国債や米国債について調べていて、ふと疑問に思ったことがあります。
日本は世界でも有数の外貨準備を持っています。そして、その中には海外の国債など、多額の外貨建て証券が含まれています。
それなら、日本政府はそこから相当な利息を受け取っているのではないでしょうか。
「財源がない」という話をよく聞きますが、もし米国債などから毎年何兆円もの収入があるなら、それは国の予算に使えないのか。今回は、日本の外貨準備と外国為替資金特別会計(外為特会)について、個人投資家の目線から調べてみました。
先に結論
日本政府は外貨準備をただ保管しているわけではありません。米国債を含むと考えられる外貨証券や外貨預金などを運用し、実際に年間4兆円台の運用収入を得ています。そして、その利益の一部はすでに一般会計に繰り入れられ、国の財源として使われています。
日本の外貨準備は約1.29兆ドル
財務省によると、2026年7月末時点の日本の外貨準備高は1兆2,870億9,900万ドルです。
その内訳を見ると、外貨のうち証券が9,273億3,200万ドルあります。ほかに外貨預金、IMFリザーブポジション、SDR、金などが含まれています。
| 2026年7月末 | 金額 |
|---|---|
| 外貨準備全体 | 約1兆2,871億ドル |
| うち外貨 | 約1兆896億ドル |
| うち証券 | 約9,273億ドル |
ここは注意したいポイントです
「日本の外貨準備の証券=すべて米国債」ではありません。財務省は外貨準備について証券の総額を公表していますが、現在保有する米国債が具体的にいくらで、その米国債だけから年間いくら利息を得ているのかまでは公表していません。
米国側の統計には「日本」が保有する米国債が出てきますが、こちらには日本政府だけではなく、金融機関や機関投資家など民間部門の保有も含まれます。
そのため、「日本政府は米国債だけで年間○兆円稼いでいる」と正確に計算することはできません。
それでも外貨資産から年間4兆円台の収入がある
では、日本政府が外貨資産全体からどれくらい稼いでいるのか。
ここは財務省が数字を公表しています。
2026年度予算
外国為替資金特別会計の運用収入
4兆6,542億円
4兆6,542億円です。
私はこの数字を見て、想像していた以上に大きいと感じました。
しかも、これは高金利になった最近だけの架空の試算ではありません。2024年度の決算でも、外為特会の運用収入は約4兆8,370億円ありました。
米国などの金利が高い状態が続けば、巨額の外貨資産を保有している日本政府にも相応の利息収入が入ってきます。
「4.6兆円の利益」と考えるのは少し違う
財務省が示している4兆6,542億円は「運用収入」です。米国債だけの利息でもなければ、経費や資金調達コストなどを差し引いた純利益でもありません。外貨証券や外貨預金などから得る利息収入等をまとめた数字として見る必要があります。
そもそも「外為特会」とは何なのか
この話を理解するには、外国為替資金特別会計、いわゆる外為特会の仕組みを知る必要があります。
日本政府が円売り・ドル買いの為替介入をするとき、政府は円を用意し、その円でドルなどの外貨を買います。
円の調達には主に政府短期証券が使われます。そして取得したドルなどは現金のまま放置するのではなく、安全性と流動性を重視しながら外貨証券や外貨預金などで運用されます。
かなり単純化すると
① 政府短期証券を発行して円を調達
↓
② 円を売ってドルなどを取得
↓
③ 米国債などを含む外貨資産で運用
↓
④ 利息などの運用収入を受け取る
こうして見ると、日本政府も私たち個人投資家と少し似た部分があります。
資産を保有し、その資産から利息を受け取り、一方では資金調達にかかる金利を支払っています。
重要なのは「外貨資産から受け取る金利」と「円を調達するために支払う金利」の差です。
米国金利が高いと日本政府にもメリットがある
ここまで調べて、以前より米国の高金利を見る目が少し変わりました。
米国金利が高いと、日本の個人投資家が米国債から高い利回りを得られるのと同じように、日本政府が保有するドル資産から得られる運用収入も大きくなりやすくなります。
一方、日本の短期金利が上昇すると、政府短期証券による円の調達コストも上昇します。
| 状況 | 外為特会への影響 |
|---|---|
| 海外金利が高い | 外貨資産の利息収入が増えやすい |
| 日本の短期金利が上がる | 円の調達コストが増えやすい |
| 海外金利が下がる | 将来の運用収入が減る可能性 |
では、この4兆円台の収入を国の財源に使えないのか
私が一番気になったのはここでした。
ニュースでは社会保障、防衛費、子育て政策、減税などの話になるたびに「財源をどうするのか」という言葉が出てきます。
それなら、外貨準備から得ている数兆円規模の収入を使えばいいのではないか。
調べてみると、答えは「すでに使っている」でした。
2026年度
外為特会から一般会計への繰入予定額
3兆1,301億円
財務省の2026年度予算資料では、外為特会から一般会計への繰入額は3兆1,301億円とされています。
2025年度は3兆2,007億円、2024年度は2兆133億円です。
つまり外貨資産の運用によって生まれた利益は、外為特会の中だけに眠っているわけではありません。
すでに兆円単位で国の一般会計を支える財源になっています。
それなら4.6兆円を全部使えばいいのでは?
ここまで読むと、「運用収入が4.6兆円あるなら、全部一般会計に入れればいいのでは」と思います。
私も最初はそう考えました。
しかし、4.6兆円はそのまま自由に使える利益ではありません。
理由① 円の調達にも金利がかかる
外貨準備の一部は、政府短期証券を発行して調達した円を使って取得してきました。
当然、政府短期証券にも金利負担があります。
海外の債券から5%受け取っているとしても、円の調達に2%かかるなら、単純な意味で5%全部が利益になるわけではありません。
理由② 為替や金利変動による損失に備える必要がある
外貨準備は巨額です。
円高になれば円換算した資産価値は減りますし、市場金利が上昇すれば既に保有している長期債券の時価は下がります。
財務省はこうした為替・金利変動などに備えるため、剰余金の一部を外国為替資金に組み入れています。
2026年度末の累計組入額は32兆9,011億円となる予定です。
理由③ 外貨準備には「為替介入の弾薬」という役割がある
外貨準備は、そもそも利益を最大化することだけを目的とした投資ファンドではありません。
急激な円安が進んだとき、日本政府がドルを売って円を買う為替介入を行うためにも必要です。
そのため財務省は、外貨資産について安全性と流動性を最大限重視し、その範囲内で収益性を追求するという運用方針を掲げています。
投資家に置き換えるなら、「老後資金や生活防衛資金まで全部高配当株に投資して配当を使ってしまう」のではなく、必要な現金や安全資産を残しておく考え方に近いかもしれません。
為替介入で受け取った円をそのまま予算に使えないの?
もう一つ疑問に思ったのが、円買い介入です。
日本政府がドルを売って円を買えば、大量の円を受け取ります。
「その円を国家予算に使えばいいのでは」と考えたくなりますが、ここにも重要なポイントがあります。
ドルを売って受け取った円のすべてが「利益」ではない
そもそも、そのドル資産を取得するときには円を調達しています。
単純化して考えてみます。
例
政府が100兆円を調達
↓
100兆円分のドル資産を取得
↓
後日ドルを売って100兆円の円を回収
この100兆円は100兆円の利益ではありません。
資産だったドルが円に戻っただけで、反対側には資金調達に伴う負債があります。
元本部分まで全部使ってしまえば、資産を取り崩して負債だけを残すことになりかねません。
一方で、外貨資産から得た利息や、売買によって生じた利益などから生まれた剰余金については、前述のように一部が一般会計へ回されています。
3兆円の財源は小さくない。ただし恒久財源とは別
それでも一般会計への繰入が年間3兆円規模というのは、決して小さな数字ではありません。
「日本は外貨準備を大量に持っているだけ」と思っていましたが、実際にはそこから利息収入を得て、その一部が国の予算を支えていることが分かりました。
ただし、これを毎年必ず同じ額が入る恒久財源と考えるのも危険です。
- 米国などの金利が下がる
- 日本の金利が上がって資金調達コストが増える
- 大規模な為替介入で外貨資産を取り崩す
- 為替や債券価格が大きく変動する
こうした状況によって、外為特会の収益環境は変化します。
一時的に数兆円の利益が出たからといって、その全額を恒久的な減税や社会保障制度の財源として約束するのは難しいということです。
個人投資家として今回感じたこと
今回この仕組みを調べたきっかけは、個人向け国債や米国債の利回りを見ていたことでした。
米国債で5%前後、日本国債でも以前よりかなり高い金利が付くようになると、「債券を大量に持っている国や金融機関は相当な利息を受け取っているのでは」と思ったのです。
実際、日本政府も巨額の外貨資産から年間4兆円台の運用収入を得ています。
ただ、個人投資でも国の運用でも、「利息が多い=その金額がすべて利益」ではありません。
資金調達コスト、為替リスク、金利変動、必要な流動性まで考える必要があります。
国債の仕組みを調べていただけなのに、金利、為替介入、外貨準備、そして国の財政までつながってきたのは興味深いところでした。
まとめ|日本は外貨準備を運用し、その利益の一部を財源にしている
- 2026年7月末の日本の外貨準備は約1.29兆ドル
- そのうち証券は約9,273億ドル
- ただし証券のすべてが米国債と公表されているわけではない
- 2026年度予算の外為特会の運用収入は4兆6,542億円
- 4.6兆円は「純利益」ではなく運用収入
- 2026年度は3兆1,301億円を一般会計へ繰り入れる予定
- つまり外貨準備から生まれた利益はすでに国の財源になっている
- 一方、運用収入は金利や為替によって変動するため、全額を恒久財源として当てにするのは難しい
「日本は米国債をたくさん持っている」という話はよく聞きます。
しかし、その先の「そこからいくら収入を得ているのか」「そのお金はどこへ行くのか」まで見てみると、国の財政の見え方が少し変わります。
私自身、外貨準備は為替介入のために置いてある資産というイメージが強かったのですが、巨額の資産を安全性と流動性を重視しながら運用し、その収益の一部が一般会計に入っていることは、もっと知られてもいい仕組みだと感じました。


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