NTT(9432)が2026年8月6日、2026年度第1四半期決算を発表しました。
翌8月7日の株価は158.5円、前日比+4円(+2.59%)まで上昇。
普段は比較的値動きの小さいNTTとしては、なかなか大きな上昇となりました。
私自身もNTT株を保有しているため、今回の決算で気になるのは、
「決算が良かった」ということだけではありません。
配当目的でこのまま保有して大丈夫なのか。
今から新しく買ってもよい株なのか。
NTTは今後も増配を続けられるのか。
今回の決算を確認した限り、私はNTTを売却したくなるような内容ではなかったと考えています。
むしろ、増収増益、16期連続増配予定、2,000億円の自社株買いに加え、
法人・金融・データセンター・AI・IOWNなど通信以外の成長分野も広がっています。
一方で、通期純利益は減益予想であり、株価も160円近くまで上昇しているため、
「何円でも積極的に買いたい株」という評価ではありません。
NTTの2026年度第1四半期決算を確認
まずは2026年8月6日に発表された決算の主要数字を確認します。
| 項目 | 2026年度1Q | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 営業収益 | 3兆6,177億円 | +10.9% |
| EBITDA | 8,362億円 | +4.3% |
| 営業利益 | 4,251億円 | +4.9% |
| 当期利益 | 2,748億円 | +5.8% |
営業収益、EBITDA、営業利益、当期利益がすべて前年同期を上回りました。
特に営業収益は前年同期比10.9%増となり、
第1四半期として過去最高を更新しています。
昨年の第1四半期は増収ながら減益でした。
それに対して今回は、売上だけでなく利益も増加しています。
「売上は増えているが利益がついてこない」という状態から改善している点は素直に評価できます。
なぜ今回のNTT決算は評価されたのか
今回の決算で私が特に注目したのは、単に通信事業だけが伸びたわけではないことです。
NTTは現在、
- 携帯電話・固定通信
- 法人向けICT
- 海外ITサービス
- データセンター
- 金融
- AI
- IOWN
- 不動産・エネルギー
といった複数の事業を抱える巨大企業グループになっています。
① 総合ICT事業は増収増益
総合ICT事業の第1四半期営業収益は1兆6,170億円。
前年同期から1,269億円増加しました。
営業利益も2,462億円となり、前年同期から65億円増加しています。
NTTドコモのモバイル通信だけを見ると競争の激しさは続いていますが、
法人ビジネスや金融を含むスマートライフ領域が収益源として重要になっています。
② グローバル・ソリューション事業の成長
グローバル・ソリューション事業の営業収益は1兆2,789億円。
前年同期から1,746億円増加しました。
営業利益も635億円となり、前年同期から57億円増えています。
ここは今後のNTTを見るうえで重要です。
NTTは「日本国内の電話会社」というイメージが強いですが、
NTT DATAを中心に世界でITサービス、システム開発、データセンターなどを展開しています。
国内通信市場だけに依存しない収益構造を作ることができれば、
NTTの長期的な成長余地は大きくなります。
③ 地域通信事業も黒字をしっかり確保
NTT東日本・NTT西日本などが中心となる地域通信事業は、
固定電話など従来型サービスの縮小という構造的な問題を抱えています。
それでも第1四半期は営業収益7,636億円、営業利益985億円となり、
前年同期から小幅ながら増収増益でした。
爆発的な成長を期待する分野ではありませんが、
通信インフラとして安定したキャッシュを生み出す役割は依然として大きいと考えます。
ただし通期では純利益5.5%減を予想
第1四半期だけを見ると非常に順調ですが、
「これならNTTは大幅増益になる」と考えるのは少し早いでしょう。
会社側は2026年度の通期業績予想を据え置いています。
| 項目 | 2025年度実績 | 2026年度予想 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 営業収益 | 14兆4,091億円 | 15兆600億円 | +4.5% |
| 営業利益 | 1兆7,062億円 | 1兆7,100億円 | +0.2% |
| 当期利益 | 1兆370億円 | 9,800億円 | -5.5% |
| EBITDA | 3兆4,233億円 | 3兆4,300億円 | +0.2%程度 |
営業収益は過去最高を目指す一方、
営業利益はほぼ横ばい、当期利益は5.5%減益の計画です。
第1四半期が好調だからといって、会社側が通期業績を上方修正したわけではありません。
今回の株価上昇を「業績が一気に成長局面へ入った」と解釈するのは早いと思います。
なぜ純利益は減る予想なのか
NTTは法人、金融、データセンターなどの成長分野へ積極的に投資しています。
NTT DATAグループの完全子会社化や金融事業の拡大など、
将来の成長に向けた大型投資も進めています。
その一方で負債や資金調達コストも増え、
会社側は支払利息の増加などを2026年度の純利益減少要因として挙げています。
したがって今後は、単純な売上成長だけではなく、
大型投資で使った資金をどれだけ利益として回収できるかを見る必要があります。
NTTは「通信会社」から変わろうとしている
私がNTTの長期投資で期待しているのは、
通信事業だけではありません。
これまでのNTTは、どうしても
「安定しているが大きく成長しない会社」
というイメージが強い企業でした。
しかし現在は、その構造を変えようとしています。
- 法人DX・ITサービス
- 海外のNTT DATA事業
- データセンター
- dカード・d払い・銀行・証券などの金融
- 生成AI・AIエージェント
- IOWN・AIOWN
AI時代とIOWNの相性は良い
AIデータセンターでは大量の電力を消費することが世界的な問題になっています。
NTTが開発を進めるIOWNでは、
光技術を活用して通信やコンピューティングの低消費電力化・低遅延化を目指しています。
2026年7月には、IOWN APNを使って全国8拠点に配置したGPUを接続する
「GPU over APN Testbed」の提供も開始しました。
これが将来大きな利益を生むかはまだ未知数ですが、
AIの普及によってデータ量と電力消費量が増えるほど、
NTTの光技術が必要とされる可能性がある点は興味深いところです。
IOWNは非常に面白い技術ですが、現時点では将来の収益規模を正確に予想することは困難です。
私は「IOWNがあるからNTTは絶対に上がる」と考えるのではなく、
現在の通信・法人・金融・IT事業だけでも投資できるかをまず判断し、
IOWNは将来の上振れ要因として考えています。
NTT最大の魅力は株主還元
私がNTTを長期保有しやすい銘柄だと考える最大の理由のひとつが、
株主還元の安定性です。
NTTは株主還元について、
「継続的な増配」と「機動的な自己株式取得」を基本方針としています。
16期連続増配を予定
2026年度の年間配当予想は、
前年度の5.3円から0.1円増配となる1株5.4円です。
これで16期連続増配となる予定です。
| 年度 | 年間配当 | 配当性向 |
|---|---|---|
| 2023年度 | 5.1円 | 33.8% |
| 2024年度 | 5.2円 | 43.5% |
| 2025年度 | 5.3円 | 42.0% |
| 2026年度予想 | 5.4円 | 44.6% |
配当性向は2026年度予想で44.6%です。
利益の大部分を無理に配当へ回しているわけではなく、
現時点では増配と成長投資を両立できる水準だと考えています。
NTTの配当利回りは突出して高いわけではありません。
それでも「現在の配当+将来の増配+自社株買い」を組み合わせて考えると、
長期投資では魅力があります。
2,000億円の自社株買いも継続
NTTは2026年5月、
2,000億円を上限とする自己株式取得を決定しました。
取得期間は2026年5月11日から2027年3月31日まで。
2026年7月末時点では331億円を取得しています。
つまり、まだ取得枠がかなり残っています。
自社株買いには、
- 市場に出回る株数を減らす
- 1株当たり利益(EPS)の押し上げにつながる
- 将来の1株当たり配当を増やしやすくする
- 株価下落時の一定の需給支援になる可能性がある
といった効果があります。
NTTは2026年3月までに累計約5.9兆円もの自社株買いを実施しており、
日本企業の中でも株主還元に積極的な企業のひとつです。
dポイントの株主向け進呈もある
NTTには100株以上を長期保有する株主を対象としたdポイント進呈制度があります。
| 保有期間 | 進呈ポイント |
|---|---|
| 2年以上3年未満 | 1,500ポイント |
| 5年以上6年未満 | 3,000ポイント |
同一株主番号で受け取れるポイントは最大4,500ポイントです。
dポイントは毎年もらえる制度ではありません。
100株の投資金額に対してポイント額が大きいため「総合利回り○%」と紹介されることがありますが、
毎年受け取れる配当と同じように計算するのは適切ではないと私は考えています。
現在のNTT株は割安なのか
2026年8月7日の終値は158.5円でした。
この株価を基準にすると、主な投資指標はおおむね以下の水準です。
| 指標 | 2026年8月7日時点 |
|---|---|
| 株価 | 158.5円 |
| 予想PER | 約13倍 |
| PBR | 約1.3倍 |
| 予想配当 | 5.4円 |
| 予想配当利回り | 約3.4% |
PER約13倍、PBR約1.3倍という数字だけを見ると、
成長株のような高い評価を受けているわけではありません。
一方、2026年の年初来高値161円に近い水準まで戻しているため、
「明らかなバーゲン価格」とも言いにくくなりました。
150円前後であれば配当利回りも高くなりますが、
株価が上昇するほど当然ながら新規投資時の配当利回りは低下します。
すでに保有している分については、今回の決算だけを理由に売却する必要性は感じません。
一方で、決算後に株価が上昇した158円台で一気に大量購入するより、
長期投資なら株価が調整した場面も利用しながら少しずつ買う方が取り組みやすいと考えています。
NTTに投資するうえで知っておきたいリスク
NTTは巨大企業で安定感がありますが、
「NTTだから絶対安全」というわけではありません。
① モバイル通信市場の競争
ドコモはKDDI、ソフトバンク、楽天モバイルなどと激しく競争しています。
通信料金の値下げ競争や顧客獲得のための費用増加は、
今後も通信事業の利益を圧迫する可能性があります。
② 大型投資と有利子負債
NTT DATAグループの完全子会社化、金融事業、データセンターなど、
NTTは現在かなり積極的に資金を投じています。
成長投資そのものは悪いことではありません。
しかし金利が上昇すれば支払利息も増えます。
実際に2026年度の純利益が減益予想となっている理由のひとつも支払利息の増加です。
③ 成長速度はそれほど速くない
NTTの2026年度営業利益予想は前年比わずか0.2%増です。
AI半導体企業のような急成長を期待する銘柄ではありません。
NTTに向いているのは、
短期間で株価が何倍にもなることを期待する投資ではなく、
配当を受け取りながら長期間保有し、増配と緩やかな利益成長を狙う投資だと思います。
④ IOWNやAIが必ず大成功するとは限らない
IOWNやAIはNTTの将来を左右する重要な成長分野ですが、
技術的に優れていることと、大きな利益を生み出すことは別問題です。
研究開発や設備投資を続けても、
投資額に見合った収益化ができなければ株主価値にはつながりません。
今後は「技術がすごい」というニュースだけではなく、
実際にどれくらい売上・利益へ貢献しているかを確認していきたいところです。
投資家目線でNTTを評価すると
| 項目 | 評価 | 理由 |
|---|---|---|
| 事業安定性 | ◎ | 国内最大級の通信インフラと巨大顧客基盤 |
| 配当 | ◎ | 16期連続増配予定 |
| 自社株買い | ◎ | 2,000億円上限の取得を実施中 |
| 利益成長 | ○~△ | 1Qは増益だが通期利益は伸び悩む |
| 成長余地 | ○ | 法人、金融、データセンター、AI、IOWN |
| 現在の割安感 | ○~△ | PER約13倍だが株価は年初来高値に近い |
| 財務面 | △ | 大型投資と金利負担は継続確認が必要 |
結局、NTTは今から買っても大丈夫なのか
私の結論としては、
長期で配当・増配を受け取りながら保有する目的であれば、NTTは現在でも投資候補になる銘柄
だと考えています。
NTTには、
- 巨大で安定した通信事業
- 16期連続増配予定
- 継続的な自社株買い
- 法人IT・海外事業の成長
- 金融事業の拡大
- データセンター需要
- AI・IOWNという将来の成長余地
があります。
ただし、現在のNTTは
「配当利回りだけを見て買えばよい高配当株」ではありません。
今後は成長投資がどれだけ利益につながるか、
モバイル事業を立て直せるか、
増加した資金調達コストを吸収できるかが重要になります。
今回の第1四半期決算は、NTTを保有している立場として安心できる内容でした。
増収増益に加え、増配、自社株買いという株主還元もしっかり継続されています。
そのため私は現時点で売却を急ぐ理由は感じていません。
一方、株価は決算後に158円台まで上昇しているため、
新規投資なら一度に大きく買うより、調整局面も利用しながら時間を分散して投資する方法が合っていると考えています。
まとめ
NTTの2026年度第1四半期決算は、
営業収益が前年同期比10.9%増、営業利益4.9%増、当期利益5.8%増と、
久しぶりに投資家が素直に評価しやすい決算になりました。
翌日に株価が大きく上昇したのも、
「NTTの業績はまだ弱いのではないか」という市場の警戒感が少し和らいだことが背景にあると考えられます。
ただし、通期では純利益5.5%減を予想しており、
業績が急成長局面に入ったわけではありません。
私がNTTで特に魅力を感じているのは、
目先の株価上昇よりも、
長年続く増配、自社株買い、安定した通信事業を土台に、新しい成長分野へ投資していることです。
高い配当だけを追い求めるのではなく、
配当を受け取りながら企業の成長も待つ。
そうした長期投資を考えるのであれば、
NTTはこれからもポートフォリオに入れておきやすい銘柄のひとつだと考えています。
- NTT株式会社「2026年度 第1四半期決算について」2026年8月6日
- NTT株式会社「2026年度 第1四半期決算短信」
- NTT株式会社「2026年度 業績予想の概要」
- NTT株式会社「株主還元(配当・自己株式取得)」
- NTT株式会社「株主さまへのdポイント進呈」
- 株価・投資指標は2026年8月7日終値時点の公開情報を参照
株式投資には元本割れのリスクがあります。最終的な投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
業績予想・配当・株主還元などは今後変更される可能性があります。



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