【日産株は買いか?】株価300円割れ・PBR0.2倍台、逆張り投資で復活を狙えるのか

個別株分析

日産自動車の株価が300円を割り込み、長期チャートを見ると
「さすがに売られすぎではないか」と感じる水準まで下がってきました。

一方、株価が大きく下落しているにもかかわらず、
予想PERは約50倍。配当も0円です。
普通の高配当株・割安株として考えれば、決して買いやすい銘柄ではありません。

しかし現在の日産は、イヴァン・エスピノーサCEOのもとで
大規模な経営再建「Re:Nissan」を進めており、
2026年度第1四半期では連結営業利益・最終利益とも黒字へ転換しました。

そこで今回は、
「逆張り投資の視点から見て、今の日産株は買いなのか?」
を、業績、PER・PBR、再建計画、商品力、復配可能性、
さらにEPS50円まで利益が回復した場合の株価シナリオまで含めて考えていきます。

先にこの記事の結論

日産はまだ「割安な優良株」と呼べる状態ではありません。
しかし、経営再建が成功した場合の上昇余地を狙うターンアラウンド投資
としては、以前よりかなり面白くなってきたと考えています。

プラス材料
連結営業黒字へ転換
コスト削減が実際の利益に反映され始めている。
割安感
PBRは約0.21倍
市場から極端に低い評価を受けている。
最大の弱点
自動車FCFはまだ大幅赤字
本業の再建は完成していない。
投資スタンス
主力投資ではなく、
少額の「再建期待枠」として考えたい銘柄。
私なら「今の日産は絶対に買い」とは考えません。
しかし、株価300円割れで再建の初期兆候が出始めているため、
逆張り投資として監視する価値は十分にあると考えています。

日産株は現在どこまで売られているのか

2026年10月6日時点の日産自動車(7201)の株価は約287円。
時価総額は約1.07兆円となっています。

項目 数値
株価 約287円
時価総額 約1.07兆円
予想PER 約50倍
PBR 約0.21倍
予想配当 0円
2026年 年初来高値 466円
2026年 年初来安値 279.4円

2026年の年初来高値466円から見ると、
株価は約4割近く下落した水準です。
2025年、2024年も株価は下落しており、
長期チャートを見ると投資家からかなり厳しい評価を受けていることが分かります。

注意したいのは「昔1,000円以上だったから安い」という考え方です。
過去の株価そのものではなく、現在の日産が将来どれだけ利益を稼げるかで判断する必要があります。

株価が安いのにPER約50倍なのはなぜ?

日産を見ると少し不思議な状態になっています。

株価:約287円
PER:約50倍
PBR:約0.21倍

PBRだけを見ると極端な割安株に見える一方で、
PERを見るとむしろ割高です。

理由は単純で、
現在の日産は利益がほとんど出ていないからです。

2026年度の会社予想では、
親会社株主に帰属する純利益は200億円、
予想EPSはわずか5.72円です。

株価287円をEPS5.72円で割ると、

287円 ÷ 5.72円 ≒ PER50倍

となります。

つまり今の日産株は、
「株価が高いからPERが高い」のではありません。

利益が小さすぎるためPERが高くなっているのです。

一方でPBR0.21倍は極端に低い

2025年度末の日産の1株純資産(BPS)は1,372円程度でした。
現在の株価が300円を大きく下回っているため、
PBRは0.2倍前後まで低下しています。

市場は日産を、

「資産はたくさん持っているが、その資産を使って十分な利益を生み出せていない会社」

と評価しているわけです。

逆張り投資では、
このような「資産価値に対して収益力が極端に低下している会社」が、
利益を正常化できるかどうかが最大のポイントになります。

日産は本当に黒字化したのか?

ここは今回の日産株を考えるうえで非常に重要です。

2026年度第1四半期では、
連結ベースの業績が大きく改善しました。

項目 2025年度1Q 2026年度1Q
売上高 2兆7,069億円 2兆9,642億円
営業利益 ▲791億円 779億円
営業利益率 ▲2.9% 2.6%
最終利益 ▲1,158億円 38億円

営業利益は前年同期の▲791億円から779億円へ改善。
わずか1年間で約1,570億円改善しています。

これは日産再建を考えるうえでは明確なプラス材料です。
「再建すると言っているだけ」の段階から、
改革効果が実際の損益に出始めた段階へ進んできました。

ただし「自動車事業」はまだ完全黒字ではない

連結だけを見ると復活したように見えますが、
本業の自動車事業を見ると状況はまだ厳しいです。

自動車事業 2025年度1Q 2026年度1Q
営業利益 ▲1,577億円 ▲83億円
フリーCF ▲3,905億円 ▲3,239億円
ネットキャッシュ 約1.13兆円 約9,692億円

営業赤字は▲1,577億円から▲83億円まで縮小しました。
ほぼ損益分岐点まで戻ってきています。

一方でフリーキャッシュフローは
▲3,239億円と依然として大幅なマイナスです。

したがって現在の日産は、
「連結では黒字化。本業の自動車事業も黒字化目前だが、キャッシュ創出力はまだ弱い」
という状態だと考えるのが分かりやすいでしょう。

2026年度通期はどこまで回復する予定なのか

日産は2026年度について、次の業績予想を維持しています。

項目 2025年度実績 2026年度予想
売上高 12兆79億円 13兆円
営業利益 580億円 2,000億円
営業利益率 0.5% 1.5%
純利益 ▲5,331億円 200億円
EPS ▲152.58円 5.72円
年間配当 0円 0円

営業利益2,000億円まで回復する見込みですが、
売上高13兆円に対する営業利益率はわずか1.5%です。

つまり、2026年度予想を達成しても、
日産が「高収益企業へ復活した」と言える段階ではありません。

逆に考えれば、
利益率を3~5%程度まで正常化できれば、利益にはかなり大きな上昇余地が残っている
とも考えられます。

エスピノーサCEOの「Re:Nissan」は本物か

現在の日産を考えるうえで外せないのが、
2025年4月に社長兼CEOへ就任した
イヴァン・エスピノーサ氏です。

エスピノーサ氏は日産で長く商品企画・商品戦略を担当してきた人物で、
就任直後に経営再建計画「Re:Nissan」を打ち出しました。

主な改革は次の通りです。

  • 固定費・変動費を合計5,000億円削減
    2026年度末までの達成を目指す。
  • 世界の生産拠点を17から10へ集約
    中国を除く生産能力を350万台から250万台規模へ削減。
  • 約2万人の人員削減
    固定費を下げ、販売台数が減っても利益を出せる体質へ変更する。
  • 開発費・開発期間を圧縮
    開発コスト効率化と新型車投入スピードの向上を狙う。
  • 商品・市場戦略を見直す
    北米、日本、中国など市場ごとに商品構成を最適化する。

2025年度にはすでに固定費・変動費で約2,550億円の削減効果が出ており、
2026年度1Qにも約600億円の改善効果がありました。
累計では約3,150億円まで進んでいます。

単に「工場を閉じる」「人を減らす」と発表しただけではなく、
コスト削減が実際の営業利益改善として数字に出始めている
点は評価できます。

問題は「日産の車を欲しいと思う人」が増えるか

一方で、コスト削減だけでは日産は本当の意味で復活できません。

個人的に今の日産最大の問題は、
トヨタやホンダと比べて
「この車が欲しいから日産を買う」
と思わせる商品が少ないことだと感じます。

トヨタにはランドクルーザー、アルファード、ハリアー、プリウスなど、
中古車市場でも強い車種が多数あります。
ホンダにもN-BOX、ヴェゼル、ステップワゴンなどがあります。

日産にもエクストレイル、セレナ、フェアレディZなど魅力的な車種はありますが、
商品ラインアップ全体ではまだ弱さを感じます。

さらに中古車のリセールバリューが弱ければ、

リセールが低い → 実質的な所有コストが高くなる → 新車が売れにくくなる

という悪循環にもなります。

ただし北米では少し変化が出ている

2026年度1Qでは米国販売が前年同期比で約9.6%増加しました。

Rogue、Pathfinder、Frontierなどが伸びており、
特にRogueは新型e-POWER投入を控えています。

日本でも新型キックスやエルグランドに一定の受注が入り、
商品面でも回復の兆しが出始めています。

エスピノーサCEOは商品企画畑出身です。
日産再建ではコスト削減以上に、
「売れる車を適切なタイミングで投入できる会社に戻れるか」
が重要だと考えています。

最大のリスクは中国市場

日産再建で最も難しい市場の一つが中国です。

中国ではBYDをはじめとする現地メーカーが急速に成長し、
EV・PHEVを中心に激しい価格競争が続いています。

日産もN6、N7、NX8など新エネルギー車を投入し、
商品構成の転換を進めています。

2026年度第1四半期には一部で販売回復が見られたものの、
その後市場環境は再び悪化しています。

中国で販売台数を維持するために値下げ競争へ巻き込まれれば、
台数が増えても利益が出ない可能性があります。
中国で「売れるか」ではなく「利益を出せるか」
を見る必要があります。

逆張り投資で最も重要なのは「EPSがどこまで戻るか」

現在の日産株を見る場合、
予想PER50倍という数字だけを見てもあまり意味がありません。

重要なのは、
再建成功後の日産がどの程度のEPSを稼げるのか
です。

2026年度予想EPSは5.72円ですが、
利益が回復するとPERは大きく変わります。

EPS 株価287円の場合のPER
5.72円 約50倍
20円 約14.4倍
30円 約9.6倍
50円 約5.7倍
80円 約3.6倍

仮にEPS50円まで戻ると、
現在の株価287円ではPER5.7倍程度まで低下します。

つまり現在の日産株への逆張り投資は、


「PER50倍の日産を買う」のではなく、
「将来EPSが30~50円程度へ戻る可能性のある日産を、
約287円で先回りして買う」

という投資になります。

EPS50円は本当に可能なのか?

では日産が将来EPS50円まで回復することは、
現実的に考えられるのでしょうか。

EPS50円を現在の株式数を基準に単純計算すると、
必要な純利益はおよそ1,750億円前後です。

2026年度会社予想の純利益200億円と比べれば、
約9倍の利益が必要になります。

一見するとかなり遠い数字に見えます。

しかし売上高13兆円規模の自動車メーカーとして考えると、
純利益1,700~1,800億円は
「絶対に不可能」という規模ではありません。

営業利益率が正常化すると利益は大きく変わる

売上高13兆円を前提として、
営業利益率ごとの営業利益を単純計算してみます。

営業利益率 営業利益
1.5% 約1,950億円
3% 約3,900億円
4% 約5,200億円
5% 約6,500億円

現在の2026年度会社予想は営業利益率1.5%です。

Re:Nissanによる固定費削減が進み、
商品力改善・値引き販売削減・工場稼働率改善などによって
営業利益率が3~5%程度まで戻れば、
利益水準は大きく変わります。

過去の日産にはもっと利益を稼いでいた時代もある

参考として2016年度の日産は、

売上高:約11.72兆円
営業利益:約7,422億円
営業利益率:6.3%

を稼いでいました。

現在とは競争環境も商品構成も異なるため、
「昔できたから今もできる」と考えるのは危険です。

それでも、
EPS50円に必要な純利益約1,750億円が、
日産という会社の規模から見て非現実的な数字ではない

ことは分かります。

私ならEPS50円を「当然達成できる数字」とは考えませんが、
経営再建が成功した場合の現実的な強気シナリオ
としては十分検討できる水準だと考えています。

EPSが回復した場合、株価はいくらになる?

EPS20円・30円・50円・80円まで回復した場合の
理論株価をPER別に単純計算すると次のようになります。

EPS PER8倍 PER10倍 PER12倍
20円 160円 200円 240円
30円 240円 300円 360円
50円 400円 500円 600円
80円 640円 800円 960円

※上記は将来株価を予想するものではなく、EPSとPERを組み合わせた単純なシナリオ分析です。

現在株価が約287円ですから、
EPS30円程度までの回復では現在株価から大きな上昇余地が出ない可能性もあります。

一方でEPS50円以上を安定して稼げる会社まで復活すれば、
現在価格から見た評価は大きく変わります。

日産株の投資妙味は「黒字化したかどうか」より、
黒字化した後にどこまで利益率を戻せるかにある

と考えています。

復配すれば株価評価はさらに変わる

現在の日産は2024年度、2025年度と年間配当0円。
2026年度も会社予想は0円です。

高配当投資家から見ると、現時点では投資対象にしにくい銘柄です。

ただし日産は復配に向けた条件を比較的明確にしています。

  • 自動車事業のネットキャッシュを1兆円以上確保する。
  • 営業利益を黒字にする。
  • 最終利益を黒字にする。
  • 自動車事業のフリーキャッシュフローを黒字にする。

2026年度1Qの自動車事業ネットキャッシュは約9,692億円で、
1兆円の目安にかなり近い水準です。

しかし自動車FCFはまだ▲3,239億円なので、
現時点では復配条件を満たしていません。

仮にEPS50円で配当性向30%なら

EPS50円まで利益が回復し、
仮に配当性向30%を採用すると、

50円 × 30% = 1株15円配当

となります。

現在株価287円で取得していた場合、
取得価格に対する配当利回りは約5.2%です。

もちろん現在の日産が配当性向30%を約束しているわけではありません。

しかし、

利益回復 → FCF黒字化 → 復配 → 配当成長

という流れまで実現すれば、
配当投資家からの資金も再び入りやすくなります。

ルノーの大量保有株は少し気になる

日産とルノーの資本関係は以前より大きく縮小しましたが、
完全に解消されたわけではありません。

2026年3月末時点で、
ルノー本体が日産株の約17.1%を保有。
さらにルノーが信託へ移した日産株が約18.7%あります。

経済的な持分を合わせると、
依然としてかなり大量の日産株がルノー側に残っています。

今後ルノーが日産株を売却していけば、
大量の売却可能株が存在するという「オーバーハング」
が株価の重しになる可能性があります。

一方で、ルノーからすれば日産株が低迷した状態で売却するより、
日産の業績が回復して株価が上昇してから売却した方が有利です。

日産再建が進めば、
最終的にルノーとの資本関係がさらに整理される可能性もあり、
長期的には一つの不透明要因が解消される可能性があります。

日産株を逆張りする場合の5つのリスク

1.コスト削減だけで終わるリスク

工場閉鎖や人員削減によって一時的に利益を戻すことは可能です。

しかし商品が売れなければ、
数年後には再び利益成長が止まります。

2.魅力ある新車を作れないリスク

今後の日産で最も重要なのは、
「日産だから買いたい」と思わせる車を増やせるかです。

新型Rogue、e-POWER、キックス、エルグランドなどが
実際に利益へつながるか確認する必要があります。

3.中国市場

中国メーカーとの価格競争が激しく、
販売台数を維持しても利益が出ない可能性があります。

4.自動車FCFが改善しないリスク

会計上黒字でもキャッシュが流出し続ければ、
再建成功とは言えません。

日産を見る場合、
営業利益以上に自動車事業FCFを確認したいところです。

5.復配まで時間がかかるリスク

無配期間が長引けば、
インカム目的の投資家には魅力がありません。

その間、再建が失敗すれば株価がさらに下落する可能性もあります。

逆に「日産復活」を判断する5つのサイン

  • 自動車事業の営業利益が黒字化
    まず本業そのものが黒字になること。
  • 自動車FCFが黒字化
    利益だけでなく実際に現金を生み出せる状態になること。
  • 営業利益率が3%以上へ上昇
    単なる損益分岐点から一段上の収益力へ移る。
  • 新型車が値引きに頼らず売れる
    北米、日本、中国で商品力改善を確認する。
  • 復配
    会社自身が財務再建に一定の自信を持ったサインになる。

次の重要イベントは2026年11月11日の上期決算

日産の次回決算発表は
2026年11月11日に予定されています。

私が特に確認したいのは次の項目です。

① 自動車営業利益
▲83億円から完全黒字へ転換できるか。
② 自動車FCF
▲3,239億円からどこまで改善するか。
③ 通期営業利益
2,000億円予想を維持できるか。
④ 新型車販売
米国・日本で販売改善が続いているか。
⑤ 中国
販売減少と値引き競争を抑えられるか。
⑥ 配当
復配条件について何らかの前進があるか。

まとめ|逆張り投資として日産株は買いか?

現在の日産株は、
一般的な「割安高配当株」としては魅力的とは言えません。

予想PERは約50倍。
年間配当は0円。
自動車FCFもまだ大幅赤字です。

しかしその一方で、

  • 株価は300円を割り込み、PBRは約0.2倍。
  • 第1四半期では連結営業黒字へ転換。
  • 自動車事業の営業赤字も▲83億円まで縮小。
  • Re:Nissanのコスト削減効果が数字に出始めた。
  • エスピノーサCEOの下で工場・商品・組織改革が進んでいる。
  • EPSが30~50円まで回復すれば現在の評価は大きく変わる。

という材料も出始めています。

筆者の考え

私なら現在の日産を
「安心して長期保有できる優良株」
とはまだ評価しません。

しかし、
「市場から見放されている企業が再建に成功する過程を狙う逆張り株」
としてはかなり興味深い水準まで来たと考えています。

特に重要なのは、
「PBR0.2倍だから安い」のではなく、
利益率とキャッシュフローが本当に回復するか

です。

逆張り投資として買うなら、
主力銘柄として大量に買うのではなく、
まず少額で保有し、
自動車事業の黒字化・FCF改善・復配を確認しながら
投資額を増やす方法が合っていると考えます。

日産が再びEPS50円前後を安定して稼げる会社へ戻れば、
現在の株価287円という水準は結果的に非常に安かったことになります。

反対に、商品力が回復せず、
中国・北米で利益を出せない状態が続けば、
PBR0.2倍でも「安いまま」の可能性があります。

今の日産は、
安いから買う銘柄ではなく、
経営再建が成功するかを見極めながら買う銘柄

だと考えています。

今後の最大の確認ポイント:
2026年11月11日の上期決算で、
「自動車事業黒字化」「FCF改善」「営業利益2,000億円予想維持」
の3点を確認したいところです。

この記事で使用した主な情報

・日産自動車 2026年度第1四半期決算資料
・日産自動車 2025年度決算資料
・日産自動車 Re:Nissan関連資料
・日産自動車 有価証券報告書・株主情報
・日産自動車 IRイベント情報
・株探 日産自動車(7201)株価・バリュエーション情報

株価・PER・PBR等は2026年10月6日時点。
将来株価やEPSのシナリオは一定の仮定を置いた試算であり、
将来の業績や株価を保証するものではありません。
投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました