日経平均急落で日本株は割安に?
PER・EPS・VIXから買い時を検証
市場の恐怖に流されず、数字で判断する。コロナショックでも買い向かった長期投資家が、今回の調整を考えます。
指数ベースPER17.86倍
予想PER15.58倍
予想PER17.7倍
日本株は2026年11月6日終値。S&P500は同日付FactSet資料。異なる算出方式のPERを単純比較することはできません。
2026年11月6日、日経平均株価は前日比3,643.13円安の57,434.77円で取引を終えました。下落率は5.96%です。
米国のAI・半導体関連株の急落が日本市場にも波及し、株式市場には強い警戒感が広がりました。
株価がこれほど下がると、長期投資家にとって気になるのは「今は買い時なのか?」という問題です。
実際、今回の下落によって日経平均・TOPIX・S&P500の予想PERはかなり低下しました。
しかし、PERが下がったことと、株が本当の意味で割安になったことは必ずしも同じではありません。
① 今回の調整でPERはどこまで下がったのか。
② 企業業績が悪化すれば割安感はどう変わるのか。
③ VIX(恐怖指数)を投資判断にどう生かすのか。
④ 配当再投資を続ける投資家はどう行動するべきか。
1.私が市場急落時にPERとVIXを確認する理由
私は主にリーマンショック後から株式市場に参加し、長期投資を続けてきました。
その後もさまざまな相場の調整局面を経験してきましたが、市場が大きく動くときに意識していることがあります。
それは、周囲の悲観や楽観だけで売買を判断せず、まず市場全体の株価指標を確認することです。
特に日経平均やTOPIX、米国株の平均PERを過去の水準と比較し、どこまで割高感が解消されたのかを考えます。
そして、必要に応じてVIX指数も確認します。
2020年のコロナショックでは、株価が世界的に急落し、先行きが非常に不透明になりました。
それでも私は、あの局面で積極的に株を購入しました。
もちろん、市場の底値が正確に分かっていたわけではありません。
ただ、株価が大幅に下落していることだけでなく、PERなどの指標を確認し、長期的な投資価値を考えて判断していました。
今回も同じように、感情より数字を重視して冷静に市場を見ています。
ただし、過去の急落局面で買うことができたからといって、今回も同じ展開になるとは限りません。
そのため、PERに加えて企業利益の見通しやVIXを確認することには意味があると考えています。
2.今回の調整で日米市場のPERはどこまで低下した?
まず、今回の調整前と11月6日時点の予想PERを比較します。
| 株価指数 | 比較前 | 11月6日 | 低下幅 |
|---|---|---|---|
| 日経平均 指数ベース |
21.18倍 | 17.86倍 | −3.32倍 |
| 日経平均 加重平均 |
16.79倍 | 14.68倍 | −2.11倍 |
| TOPIX 予想PER |
17.03倍 | 15.58倍 | −1.45倍 |
| S&P500 12か月先予想 |
19.0倍 | 17.7倍 | −1.3倍 |
日経平均とTOPIXは2026年10月29日から11月6日の比較。S&P500は9月30日から11月6日公表値の比較です。TOPIXは会社予想に基づく独自集計です。
日経平均:高まっていた割高感が大きく後退
日経平均の指数ベースPERは21倍台から17倍台へと大幅に低下しました。
ただし、日経平均は半導体や一部の値がさ株の影響が大きいため、市場全体を見るならTOPIXも確認したいところです。
TOPIX:過去10年の平均に近づいた
TOPIXの予想PERは15.58倍です。参考にした同一系列の独自集計による過去10年平均は15.25倍です。
つまり、今回の急落で市場全体の割高感はかなり薄れましたが、歴史的に見て極端に割安な水準とはまだ言えません。
S&P500:5年・10年平均を下回る
17.7倍
2026年11月6日付FactSet
19.1倍
過去5年平均は19.8倍
米国株も以前と比較すれば投資しやすい水準へ近づいています。
もっとも、金利や成長率、指数を構成する企業の変化によって適正PERは変わります。過去平均を下回ったというだけで、割安が確定したわけではありません。
3.株価が下がってもEPSは上がっている
今回の調整で、私が特に注目しているのが企業利益の動向です。
PERは株価が下がれば低下します。しかし、それだけではありません。
企業の予想EPSが増加した場合にも、PERは低下します。
日経平均の予想EPSは約5.3%上昇
3,052.86円
指数ベースの予想EPS
3,215.83円
指数ベースの予想EPS
同じ期間に、日経平均株価は64,659.47円から57,434.77円へと約11.2%下落しました。
ところが指数ベースの予想EPSは約5.3%増加しています。
株価は急落しましたが、指数から計算される利益予想は悪化していません。
つまり、現時点のPER低下には、株価下落だけでなく利益予想の上昇も関係しています。
なお、加重平均方式では予想EPSの変化率は約1.6%の増加です。
指数ベースと加重平均では集計方法が異なるため、同じ数値にはなりません。
また、これは指数に対応する予想EPSであり、上場企業すべての実績利益が同じ割合で増加したという意味ではありません。
TOPIXも予想EPSは小幅上昇
TOPIXについても、10月29日から11月6日の間に株価指数は約7.4%下落した一方、予想EPSは235.03から238.00へ約1.3%上昇しています。
日本市場全体で見ると、株価が利益予想以上に大きく下落していることが分かります。
米国企業の利益成長は依然として力強い
FactSetの2026年11月6日付の調査では、S&P500企業の7〜9月期の利益成長率は前年同期比31.4%となる見込みです。
これは決算発表済み企業の実績と未発表企業の予想を組み合わせた数字です。
ただし、決算発表済み企業の利益が市場予想を上回った幅は2.7%で、過去5年平均の7.5%を下回っています。
利益が伸びていても、市場が期待していたほどの上振れがなければ、株価が下落することはあります。
株式市場は半年後、1年後、さらにその先の業績を織り込もうとします。
現在の決算が好調でも、将来の増益率が鈍化すると考えられればPERは縮小する場合があります。
4.VIX指数から市場の恐怖感を読み取る
PERとあわせて、私が時々確認する指標がVIX指数(恐怖指数)です。
VIXは、S&P500のオプション価格をもとに、今後約30日間の市場変動率に対する期待を年率換算で表した指数です。
市場が不安定になり、投資家が大きな値動きを警戒すると上昇しやすい特徴があります。
重要なのは、VIXが表すのは値動きの大きさに対する期待であり、株価が今後下がる確率や下落率そのものではないということです。
VIXの水準をどう考える?
| VIX水準 | 市場心理の目安 | 投資家としての考え方 |
|---|---|---|
| 15未満 | 比較的落ち着いた市場 | 過度な楽観がないか確認 |
| 15〜20 | 通常の変動が多い領域 | PERや業績を中心に判断 |
| 20〜30 | 警戒感が強まりやすい | 割安株の候補を探す |
| 30〜40 | 強い不安や急変動 | 急落継続と流動性に注意 |
| 40以上 | 非常に強い緊張状態 | 余力を確保し慎重に分割投資 |
上記は理解を助けるための便宜的な目安です。Cboeが定めた売買基準ではなく、同じ数値でも市場環境によって意味は異なります。
今回の調整ではVIXも急上昇
17.20
米国市場の終値
28.18
米国市場の終値
約1週間でVIXは大幅に上昇しました。
この動きからも、今回の急落で投資家の警戒感が強まったことが読み取れます。
11月6日の米国市場ではVIXが20台半ばまで低下する動きも見られましたが、警戒感が完全に解消したと判断するには早いでしょう。
VIXは米国市場の指数です。日本市場とは取引時間が異なります。11月6日の日本株急落を考える際には、前夜にあたる米国11月5日のVIXも重要です。
コロナショックではVIXが82.69を記録
2020年3月16日、コロナショックで世界の株式市場が混乱する中、VIXは終値82.69を記録しました。
現在の20台とは比較にならないほど強い緊張状態だったことが分かります。
私はコロナショックのときも、積極的に株を購入しました。
暴落局面で株を買うのは、決して気分の良いものではありません。
買ったあとにさらに下がる可能性がありますし、先行きが見通せない状況では不安にもなります。
それでも、長期投資の視点で企業価値を考えると、株価下落が投資機会になる可能性もあります。
その判断を支える材料の一つが市場平均PERであり、投資家の警戒感を測る補助指標がVIXだと考えています。
ただし、VIXが高いから買えば勝てるわけではない
ここは誤解してはいけません。
VIXが30を超えても株価がさらに下がる場合があります。40を超えたからといって、その日が底値になるわけでもありません。
また、VIXが低くても市場に割高感が残っていることはあります。
私が重視したいのは、PERによる価格評価と、VIXによる市場心理を分けて見ることです。
市場が恐怖に包まれていても、利益予想が崩れている企業には慎重であるべきです。
PERとVIXを組み合わせると判断しやすい
| 市場PER | VIX | 考え方 |
|---|---|---|
| 高い | 低い | 楽観と割高感に注意 |
| 高い | 高い | 混乱していても割安とは限らない |
| 低い | 低い | 業績・金利を確認して選別 |
| 低い | 高い | 投資機会の可能性。ただし底値保証なし |
私はこのように、PERとVIXをそれぞれ違う役割の指標として考えています。
PERは価格と利益の関係、VIXは市場が予想する値動きの大きさ。両方を確認すれば、相場の一面だけに目を奪われずに済みます。
5.予想EPSが下がれば株価はさらに下落する?
今回の調整でPERが低下したことは、長期投資家にとって前向きな材料です。
しかし、私が最も警戒しているのは今後の企業業績悪化による予想EPSの下方修正です。
現在の予想PERは将来利益を前提にしたものです。利益予想が下がれば、株価が変わらなくてもPERは上昇します。
株価1,500円の企業でシミュレーション
架空の企業を使って考えてみましょう。
株価1,500円、予想EPS100円ならPERは15倍です。
| シナリオ | EPS | 適用PER | 株価 | 下落率 |
|---|---|---|---|---|
| 現在 | 100円 | 15倍 | 1,500円 | ― |
| EPS10%減 | 90円 | 15倍 | 1,350円 | −10% |
| EPS20%減 | 80円 | 15倍 | 1,200円 | −20% |
| EPS20%減+評価低下 | 80円 | 13倍 | 1,040円 | −30.7% |
| EPS20%減+評価上昇 | 80円 | 17倍 | 1,360円 | −9.3% |
株価=EPS×PERとして計算した架空の例です。実際の将来株価の予測ではありません。
= 株価1,040円
EPSが20%減少し、評価されるPERも15倍から13倍へ縮小すると、株価は約30.7%下落する計算になります。
一方、EPSが80円へ減少しても株価が1,500円のままなら、PERは18.75倍に上がります。
つまり、業績悪化によってPERが上がることと、株価が上昇することは全く別の話なのです。
日経平均でもEPS下方修正を想定すると
11月6日時点の日経平均の指数ベース予想EPSは3,215.83円です。
仮にこの予想が10%下方修正され、株価が57,434.77円のままなら、予想PERは約19.84倍となります。
今回PERが17.86倍まで下がったとしても、利益予想が悪化すれば、株価が変わらないままPERが再び20倍近くへ上昇する可能性があります。
さらに市場が適正と考えるPERも低下すれば、株価の一段安につながります。
これが、今回の相場で私が最も注意しているリスクです。
6.今後の日本株・米国株をどう見る?
今後の相場は、企業業績がどの程度維持されるかによって大きく変わると考えます。
企業利益が拡大し続け、急落によって低下したPERが回復する。株価の持ち直しにつながる可能性があります。
利益成長は鈍化するものの、大きな減益には至らず、市場が適正PERを探る展開です。
企業利益が下方修正され、PERもさらに縮小する。株価が再び大きく下落する可能性があります。
会社予想EPS、営業利益率、金利、VIX、設備投資、受注動向、配当方針を定期的に確認します。
AI・半導体関連企業の成長期待は維持されるか
今回の調整では、AI・データセンターへの巨額投資の持続可能性に対する懸念が強まりました。
AI市場の長期的な成長と、現在の株価を正当化できるほど利益が増えるかという問題は別です。
設備投資計画の縮小や収益化の遅れがあれば、AI関連企業だけでなく、その取引先にも影響が広がる可能性があります。
金利と為替も無視できない
金利上昇は企業の資金調達コストを押し上げ、将来利益の現在価値にも影響します。
また、日本企業には為替の影響もあります。円高は輸出企業の利益を圧迫する一方、原材料を輸入する企業には追い風になる場合があります。
市場全体が下がっているからといって、すべての企業の業績に同じ影響が出るわけではありません。
7.増配株投資家として今回の調整をどう生かすか
私の基本的な投資方針は、優良企業を長期保有し、受け取った配当金を再投資することです。
そのため、株価下落は必ずしも悪いことばかりではありません。
企業の収益力が維持されているなら、株価下落によって配当利回りが上昇し、同じ投資額で多くの株式を購入できるからです。
ただし、将来の減配リスクを見落とさないようにしなければなりません。
EPS悪化で配当性向も上昇する
例えば年間配当50円の企業があるとします。
| EPS | 年間配当 | 配当性向 |
|---|---|---|
| 100円 | 50円 | 50.0% |
| 80円 | 50円 | 62.5% |
| 60円 | 50円 | 83.3% |
EPSが減少しても配当を維持すれば、配当性向は高くなります。
配当性向が高くなりすぎると、将来の増配余力が小さくなり、状況によっては減配リスクも高まります。
なお、金融業と製造業では適切な配当性向や財務指標が異なります。単一の基準だけで判断するべきではありません。
私なら買い増し前に何を確認するか
- 市場平均PER:日経平均・TOPIX・S&P500が過去の水準と比較して割高か割安か。
- 予想EPS:企業業績の見通しが維持されているか、下方修正が始まっていないか。
- VIX:市場がどの程度の変動を警戒しているか。
- 個別企業の収益力:営業利益、利益率、キャッシュフローに問題がないか。
- 配当の持続可能性:増配実績、配当性向、DOEや累進配当方針を確認する。
- 財務と投資余力:有利子負債や手元資金、自分自身の生活防衛資金を確認する。
市場が大きく下落したときほど、感情で一括購入するのではなく、企業価値と価格を比較したいと思います。
余力を確保し、業績を確認しながら段階的に購入することも有効な方法です。
PERとVIXだけでは判断できないこと
今回のような急落相場では、割安な企業まで一緒に売られる可能性があります。
一方で、業績悪化によってPERが低く見えるだけの企業もあります。
ここで重要なのは、市場平均PERとVIXで相場環境を確認したあと、最終的には個別企業の収益力を分析することです。
市場全体の数字を確認することは、買うべき企業を選ぶための出発点だと考えています。
8.まとめ:パニック相場でも数字を見て判断したい
2026年11月の急落によって、日経平均・TOPIX・S&P500の予想PERは大きく低下しました。
現時点では日経平均やTOPIXの予想EPSが上昇しており、株価ほど企業利益の見通しは悪化していません。
一方、VIXも上昇し、市場の警戒感が強まっていることが分かります。
ただし、今後の企業業績が悪化すれば、予想PERは再び上がり、株価が一段と下落する可能性もあります。
私はリーマンショック後から投資を続け、コロナショックをはじめとした市場の混乱も経験してきました。
コロナショック時には積極的に株を買いましたが、それは将来の底値を確信していたからではありません。
市場平均PERなどを参考にしながら、長期的に投資する価値があるかを考えて判断してきました。
今回も同じです。
市場平均PERで割高感を確認し、VIXで市場の警戒感を把握する。
そして、EPSやキャッシュフローから企業の収益力を確認したうえで、購入を判断する。
株価が下がったから買うのではなく、利益を生み続ける企業が割安になったときに買う。
この基本姿勢を今後も大切にしたいと思います。
株価の下落は不安ですが、長期投資家にとっては新しい投資機会になることもあります。
だからこそ、悲観にも楽観にも偏らず、数字と企業価値を確認しながら冷静に判断していきたいと思います。
参考資料・データ出典
※2026年11月7日作成。日本株は原則11月6日終値。S&P500はFactSetの11月6日公表資料に基づきます。PER・EPSは算出方法、対象期間、利益予想の定義に差があります。VIXは米国株式市場のオプション価格から計算される変動率指標であり、株価の下落確率を示すものではありません。


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